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 急性腹膜炎

急性腹膜炎の概要は?
おもな症状
  38℃以上の発熱
腹痛(初めは軽度だが次第に強くなり激痛となる、痛みの範囲が広がり我慢できなくなりエビのような姿勢をとることが多い)
吐き気
嘔吐
お腹が張った感じ
似ている病気
  急性胃腸炎
胃・十二指腸潰瘍
急性肝炎
急性胆嚢炎
胆石症
急性膵炎
急性虫垂炎・盲腸
急性腎盂腎炎
尿路結石
卵巣炎
卵管炎
子宮外妊娠
腹腔内出血
起こりやすい合併症
  腎障害
敗血症
ショック
意識障害
呼吸障害
循環器障害

急性腹膜炎ってどんな病気?
急性腹膜炎・慢性腹膜炎
  イメージ画像 腹膜とは腹腔内(ふくくうない)を覆う膜のことです。本来、腹腔内は無菌状態になっています。
 この腹膜に細菌感染、物理的刺激、化学的刺激によって炎症が起こるものを、腹膜炎と呼びます。
 腹膜炎はその経過から、急性腹膜炎と、慢性腹膜炎とに分類されます。
急性汎発性腹膜炎・限局性腹膜炎
   急性腹膜炎には、腹膜全体に炎症が広がる急性汎発性腹膜炎(きゅうせいはんぱつせいふくまくえん)、腹部の一部に膿瘍を形成する限局性腹膜炎(げんきょくせいふくまくえん)があります。
 急性汎発性腹膜炎は生命に関わる重症の状態に陥る可能性があるため、緊急な医学的処置が必要です。

急性腹膜炎の原因は?
細菌因子と化学因子
  イメージ画像 急性腹膜炎の多くは、さまざまな消化器疾患の合併症として発症します。
 急性腹膜炎発症の原因には、細菌因子と、化学因子があります。
急性腹膜炎の原因分類
 
 穿孔 
@外傷性穿孔
   腹部臓器の外傷
   医原性穿孔
A消化管穿孔
   消化性潰瘍
   憩室炎
   腸管の炎症性疾患
   悪性腫瘍(胃ガン・小腸ガン・大腸ガン
 炎症の波及 
@急性虫垂炎
A急性胆嚢炎
   →胆汁性腹膜炎
B急性膵炎
C女性性器の炎症
   →骨盤腹膜炎
 虚血性病変 
@絞扼性イレウス
   腸重積
A虚血性腸疾患
   腸間膜閉鎖症
 手術後 
@縫合不全
A手術後腹膜炎
細菌因子
   細菌因子とは、急性虫垂炎(きゅうせいちゅうすいえん)、急性胆嚢炎(きゅうせいたんのうえん)、急性膵炎(きゅうせいすいえん)などの腹腔内の臓器の炎症が、腹膜へ波及することによって発症します。
 一般的には、急性虫垂炎がもっとも頻度が高くみられます。
化学因子
   化学因子では、外傷、消化管疾患、腸間膜の虚血による消化管穿孔(しょうかかんせんこう)が原因によって起こる胃液・胆汁などの腹膜への漏出があげられます。
 外傷では、打撲、交通事故外傷があります。
 消化管疾患では、胃潰瘍・十二指腸潰瘍胃ガンなどの悪性腫瘍に続発します。
 急性胆嚢炎に胆嚢穿孔が加わった場合、重症の急性膵炎では、胆汁・膵液の化学的刺激と細菌感染が重なり、重症の状態になることが多くみられます。

腹膜とは?
腹膜とは?
  イメージ画像 腹膜は腹腔の内側、および腹腔内の臓器を覆うひとつの繋がりを持った膜です。腹腔内面・骨盤腔(こつばんくう)・横隔膜下面を覆う壁側腹膜(へきそくふくまく)と、腹腔臓器を覆う臓側腹膜(ぞうそくふくまく)からなります。
 腹腔の前壁は腹壁と呼ばれ、皮膚や筋肉で形成されています。後壁は脊椎(せきつい)、肋骨(ろっこつ)、筋肉で形成されています。
 腹部の背部と後壁の間は厚い脂肪の層になっており、これを後腹膜腔(こうふくまくくう)と呼びます。この中に十二指腸、膵臓、脾臓(ひぞう)、腎臓などの臓器があり、これらの臓器を後腹膜臓器と呼びます。
腹膜のはたらき
   腹膜のおもな働きは、水分・電解質・糖質などを腹腔から吸収したり、腹腔内に炎症が起きた場合に滲出液(しんしゅつえき)と呼ばれる食菌・抗菌作用のある物質の分泌、毒性産物の吸収の抑制を行う生体防御能を担っています。
 一方で、腹膜に物理的・化学的、あるいは感染などの刺激が加わり、炎症が及んだ時には癒着能(ゆちゃくのう)が働き、炎症変化をすみやかに限局させて炎症が広がらないような作用をします。
 また腹膜は、腹腔内の圧力を一定に保つ働きもしています。
女性の場合
   腹腔内は通常は無菌です。
 しかし女性では、卵管で外界と通じていて、とくに骨盤腹膜炎(こつばんふくまくえん)の原因になります。

急性腹膜炎の症状は?
限局性腹膜炎
  イメージ画像 限局性腹膜炎であれば、部分的な腹痛と、手で押すと痛みが強くなる圧痛がおもな症状です。
汎発性腹膜炎
   汎初性腹膜炎の場合、腹部全体が痛み、発熱、頻脈が起こり、苦しそうに顔を歪ませます。
腹膜炎顔貌
   頬骨が突き出し、目が落ちくぼんでクマができ、鼻が尖った特有の顔付きになることがあります。これを腹膜炎顔貌(ふくまくえんがんぼう)といいます。
意識障害やショック
   腹膜炎が進行すると、嘔吐、排便、排ガスの停止、腹部全体の腫れなどの腸閉塞の症状が起こります。意識がもうろうとなり、騒いだり、暴れたりする不穏状態や、ショック状態に陥ります。
 急性虫垂炎・盲腸急性胆嚢炎腸閉塞から腹膜炎になった場合は、それぞれの病気の症状が先に現われ、次第に汎発性腹膜炎の症状が現れてきます。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍が原因の場合
   胃・十二指腸潰瘍などの穿孔で起こった場合、突然の腹痛と共に、すぐに汎発性腹膜炎の症状が現われます。

急性腹膜炎の診断は?
まずは医師の診察から
  イメージ画像 医師の診察によって、圧痛、筋性防御(きんせいびょうぎょ)、ブルンベルグ徴候、腸雑音の有無を調べます。
圧痛の特徴
   圧通は部位が限られているため、鑑別診断に有用です。しかし、圧痛が腹部全体に及ぶ汎発性腹膜炎の場合も、原疾患の部位の圧痛が特に強くみられます。
筋性防御の特徴
   筋性防御は壁側腹膜の炎症を示唆する所見で、急性腹膜炎の診断に有用です。
 初期では軽い触診で腹壁(ふくへき)の筋肉の緊張として触知されますが、病状が進行すると腹筋は硬く緊張し、腹壁反射は消えて板状硬(ばんじょうこう)と呼ばれる状態になります。
ブルンベルグ徴候とは
   ブルンベルグ徴候は、腹部を圧迫した手を急に離すことで周囲に痛みが響く所見のことをいいます。腹膜炎にみられる所見です。
 腸雑音は、腸管の麻痺のために低下します。
血液検査・画像検査
   急性腹膜炎の診断は、原因疾患によって異なります。検査はあくまでも病歴、理学所見から鑑別診断を考慮して選択します。
 血液検査、画像検査が有用です。
 血液検査では、白血球が増加し、炎症反応を示すCRPが陽性になります。
 画像検査では、腹部単純エックス線、腹部超音波、腹部CTが有用です。
原因疾患によってことなる検査
   消化管穿孔の場合には、腹部単純エックス線で横隔膜下の空気遊離像(フリーエアー像)が診断の決め手になります。
 そのほか、急性胆嚢炎急性膵炎などの原因になる疾患の区別には、腹部超音波、腹部CTが有効です。

急性腹膜炎の治療法は?
入院が必要
  イメージ画像 入院の上、全身状態を改善する治療と、原因を除去する治療が必要になります。
 入院期間は、原因や年齢によって異なりますが、3週間〜4週間以上になることが少なくありません。
全身状態を改善する治療
   絶対安静を保つと共に、点滴で栄養を補います。また、炎症の原因となっている細菌を撲滅するため、強力な抗菌薬を使用します。
 胃などの上部消化管の病気が原因の場合、ブドウ球菌、連鎖球菌、腸球菌、真菌などが多くなります。大腸などの下部消化管の病気が原因の場合は、グラム陰性桿菌(大腸菌など)、嫌気性菌(けんきせいきん)、βラクタマーゼ産生菌などが多くなります。それぞれに有効な抗菌薬を使用します。
 特発性細菌性腹膜炎の場合、大人は大腸菌、グラム陽性球菌。子供は溶血性連鎖球菌、肺炎球菌が原因菌となることが多いので、これに有効な抗菌薬を使用します。
 一方で原因菌の種類を調べる検査を実施し、判明したところでその菌に有効な抗菌薬に切り替えます。
 軽症の限局性腹膜炎の場合、全身を改善する治療で治癒することもあります。多くは、原因を除去する治療が必要になります。
原因を除去する治療
   胃腸が破れたり、穿孔を起こしている場合、縫合する手術が必要になります。胃や腸の一部を切除しなければならないこともあります。腹腔鏡下手術を行うこともあります。
 また手術では、腹腔内に貯まっている液や膿を排除・洗浄し、そのあと膿を体外へ排出するための管であるドレーンを腹腔内に留置しておきます。
合併症
   横隔膜の下に膿が貯まる横隔膜下膿瘍(おうかくまくかのうよう)、ダグラス窩に膿がたまるダグラス窩膿瘍が起こり、治療が必要になることもあります。

急性腹膜炎かなと思ったら?
早期の治療が必要
  イメージ画像 急性腹膜炎は、原因になる疾患にもよりますが、早期に治療すれば予後は良好です。
 夜間であっても、我慢せずに緊急に治療を受けるべきです。
 急性腹膜炎の原因となっている疾患を治療することが必要になる場合がほとんどです。
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