そらいろネット > 家庭の医学 > 食中毒による病気 > カンピロバクター食中毒・カンピロバクター腸炎
代表的な細菌性食中毒です。原因となる病原体は、カンピロバクター・ジェジュニです。まれに、カンピロバクター・コリもあります。 カンピロバクターは、さまざまな動物が保有している細菌です。身近な動物では、鶏、犬、豚、牛、猫などが保有しています。 身近な野鳥図鑑:ニワトリ 身近な動物図鑑:ブタ 身近な動物図鑑:ウシ 身近な生き物図鑑:身近な犬図鑑 身近な生き物図鑑:身近な猫図鑑
おもな原因食品は、生、あるいは加熱があまりされていない鶏肉(鶏刺し、タタキなど)、加熱不十分な鶏肉(バーベキュー、鶏鍋、焼き鳥など)などがあります。動物の糞で肉が汚染されてしまいます。 鶏肉から調理過程の不備で二次汚染された食品も原因となります。 井戸水、湧き水、簡易水道など、消毒不十分な飲用水による感染事例もあります。 生乳が感染源となることもあります。
カンピロバクター食中毒が多発する季節は、5月〜6月ですが、年間を通じてみられます。集団発生の他にも、家族内発生、散発的な発生もあります。 子供に多い食中毒ですが、大人でもみられます。
潜伏期間は1日〜7日で、平均すると2日〜3日で、他の食中毒菌と比較して長いのが特徴です。
おもな症状は、下痢です。軟便〜水様便で、血便や粘液便をともなうこともあります。回数は1日に2回〜6回程度です。 吐き気、嘔吐、腹痛、37.5℃〜39.5℃の発熱があります。40℃を超えるような高熱はまれで、発熱に気が付かないこともあります。 腹痛はかなり強く、臍の周りが痛むことが多いです。
頭痛、悪寒、倦怠感、筋肉痛などがあらわれることもあります。 初期症状では風邪と間違えられることもあります。サルモネラと似た臨床症状を示し、血便をともなうため赤痢と間違えられることもあります。 2日〜5日程度で回復しますが、長引いたり、再燃することがあります。
ほかの病原体でも、同様の症状を起こすので、他の病原体による腸炎と区別する必要があります。 確定診断には、便の細菌検査によるカンピロバクターの検出を行います。抗菌薬投与前に便の検査を行うことが重要となります。
自然軽快することが多いです。薬剤を服用せず、あるいは整腸剤の服用で治癒することもよくあります。輸液や食事療法で大部分は治癒します。 脱水を防止するために、下痢をしていても水分の補給をおすすめします。
中等症〜重症のものは、抗生物質を用いた適切な化学療法が必要となります。 第一選択薬は、エリスロマイシンなどのマクロライド系薬剤、そしてホスホマイシンです。 セフェム系薬剤に対しては、多くの菌株が薬の効かない自然耐性を示し、ニューキノロン系薬剤に対しては耐性菌を誘導することがあり、耐性菌も増加しているので注意が必要です。 脱水がひどければ、点滴で水分を補うこともあります。
カンピロバクター感染症の予後は、一般的には良好です。一部の症例では、治療後にギラン・バレー症候群を発症することが知られています。
症状があって改善しないようなら、受診することをおすすめします。特に食品を取り扱う人は受診するようにしましょう。 成人の場合は、内科、胃腸科、消化器内科、感染症科を受診します。小児の場合は、小児科を受診してください。 下痢止め薬、手持ちの抗菌薬などは服用せず受診するようにしましょう。
他の人への感染を防ぐには、良く手を洗う必要があります。 石鹸で十分に手を洗い、水道水で綺麗に洗い流すようにします。
カンピロバクターは食材の中では、鶏肉からもっとも高率に検出されます。生、あるいは加熱不十分の鶏肉を食べることは控えるべきです。 熱や乾燥に弱いので、調理器具は使用後に良く洗浄し、熱湯消毒して乾燥させることが重要です。
食肉からサラダなどへの二次汚染を防ぐために、生肉を扱う調理器具と、調理後の料理を扱う器具は区別するよにしましょう。 また、生肉を扱ったあとは十分に手指を洗浄することも重要です。 患者さんの排泄物にもカンピロバクターが含まれるので、下痢をしている人は十分に手洗いをするなどして、周囲に感染させないように注意しましょう。
野生動物の糞などで汚染される可能性のある貯水水槽・井戸水・沢水など、未殺菌の飲料水は飲まないようにしましょう。 小児では、犬や猫などの保菌動物への接触で感染することもあるので、便などに触らないなどの注意が必要です。