そらいろネット > 家庭の医学 > 感染症による病気 > アメーバ赤痢
軽度の下痢・しぶり腹(テネスムス) いちごゼリー状の粘血便(ねんけつべん) 右側腹部圧痛 無症状の場合もある
細菌性赤痢(さいきんせいせきり) 日本住血吸虫症(にほんじゅうけつきゅうちゅう)の急性期
腸穿孔(ちょうせんこう) 肝臓、肺、脳などに転移病巣形成
世界各地に広く分布しています。とくに、熱帯、亜熱帯地域に多い原虫性疾患です。赤痢症状がある場合は、法定伝染病として扱われます。世界人口の10%が赤痢アメーバに感染しており、そのうちの10%が病気を引き起こす赤痢アメーバです。 日本では、戦後各地で流行し、その後は次第に激減してきました。
近年では、輸入感染症のほか、新たに男性同性愛者間の国内感染、知的障害者施設収容者などで増加傾向にあります。 特に男性同性愛者間に流行する赤痢アメ−バ感染症は他の性感染症(梅毒、HIV感染症、B型肝炎、性器ヘルペスなど)を合併していることが少なくありません。
赤痢アメーバの嚢子(のうし・赤痢アメ−バシスト)に汚染された飲食物や、手指を介して経口感染します。 嚢子は胃を経て小腸に達し、そこで栄養型となり分裂を繰り返して大腸に到達します。原虫は大腸粘膜面に潰瘍性病変を形成し、赤痢アメ−バ性大腸炎を発症させます。 感染源としては、急性期患者よりも、嚢子を排出する回復期患者や無症状患者の方が危険です。
潜伏期間は不定で、数日〜数ヶ月に及びます。無症状のものから、軽度の軟便や下痢、あるいは回盲部圧痛(かいもうぶあっつう)と、しぶり腹を伴ういちごゼリー状の粘血便を、1日数回〜十数回排出する赤痢症状があらわれるものまで、症状は多様です。 多くの場合、内痔核や大腸腫瘍だと思い医療機関を受診します。しかし潰瘍性大腸炎と誤診されてしまうこともあります。
放置すると病変が進行し、腸穿孔(ちょうせんこう)による腹膜炎(ふくまくえん)や、大腸周囲炎(だいちょうしゅういえん)を併発して、急激に悪化します。 ですが、慢性期に移行することもあります。
大腸の原発病巣から、血行性に5%ほどが腸管外病変を形成します。肝臓、肺、脳、皮膚などに転移することがあるのがアメーバ赤痢の特徴です。 この場合、もっとも多いのが肝膿瘍(かんのうよう)で、右葉に好発し、不定の発熱、悪心(おしん)、右季肋部痛(みぎきろくぶつう)などの症状がみられます。
どのタイプの病型でも、メトロニダゾールや、チニダゾールが効果的です。重症患者の場合は、デヒドロエメチンも使用されます。
肝膿瘍の場合には、排膿を促進するため、外科的処置の併用が治療を早めます。
流行地での飲食物の加熱のほか、氷からの感染にも注意しましょう。 患者の早期発見と、迅速な治療が大切です。