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 放射線障害

放射線障害の概要は?
おもな症状
  頭痛
下痢・嘔吐
白血球減少
消化管潰瘍
脳の障害による痙攣
意識消失発作

放射線障害ってどんな病気?
放射線の分類
  イメージ画像 放射線は、電離放射線と、非電離放射線に分類することができます。
 電離放射線とは、エックス線(X線)、ガンマ線(γ線)、アルファ線(α線)、ベータ線(β線)、電子線、陽子線、重粒子線、中性子線があります。非電離放射線とは、紫外線、赤外線、可視光線、マイクロ波、レーザー光線、磁場があります。
 また、電離放射線は電磁波、荷電子を持つ粒子線、荷電を持たない粒子線に分類することができます。
 電磁波は、エックス線、ガンマ線。荷電を持つ粒子線はアルファ線、ベータ線、電子線、陽子線、重粒子線。荷電を持たない粒子線は、中性子線です。
事故による被曝
   一般的に、放射線障害は電離放射線による障害のことを指します。放射線による体内被曝と体外被曝があります。
 具体的には、原子炉事故、臨界事故、エックス線発生装置による事故、電離放射線取り扱い従事者の被曝事故などがあります。
 電離放射線の生体への影響としては、早期障害、晩発障害、後世代的障害があります。
グレイとシーベルト
   物質が放射線に照射された時、物質の吸収線量を示す単位がグレイ(Gy)です。
 しかし、人体が放射線を受けた場合の影響は、受けた放射線の種類によって異なるため、吸収線量値(グレイ)に放射線の種類ごとに定めらられた放射線荷重係数を乗じて線量当量(シーベルト、Sv)を算出します。
 人間は年間で約2.4ミリシーベルトの自然放射線にさらされています。

携帯電話の健康障害は?
電離電磁波と非電離電磁波
  イメージ画像 電磁波は、電離電磁波と非電離電磁波に分類されます。電離電磁波とは、エックス線(X線)やガンマ線(γ線)などの放射線です。非電離電磁波とは、ラジオ波、マイクロ波、光に分類できます。
 電波といえば通常、ラジオ波を指します。ラジオ波帯域は、周波数3kHz〜300MHz、波長100km〜1mの領域の波です。マイクロ波帯域は、周波数300MHz〜30GHz、波長1m〜1mmの領域の波です。携帯電話には、900Mz前後のマイクロ波が用いられています。
マイクロ波による体温上昇と健康障害
   かつて産業現場では、体温の上昇(熱作用)を引き起こすような高いレベルのマイクロ波が用いられていました。そのため、白内障や無精子症が問題になりました。現在では職業的曝露基準値が見直され、低く設定されているため、健康障害はみられなくなりました。
 影響があるとすれば、携帯電話を含めて、熱作用を示さない低レベルのマイクロ波を使用する場合です。
悪性腫瘍との関係
   ここ最近、熱作用を示さない低レベルのマイクロ波に発ガン性があるのか、生殖器系や脳神経系などに影響を及ぼさないかどうか調査されています。現在までのところ、生殖器系や脳神経系への影響はほとんど否定的です。
 しかし発ガン性に関しては、脳腫瘍、造血器腫瘍などの悪性腫瘍の発生との因果関係を肯定する報告や、否定する報告があり、まだ結論は得られていません。今後、さらに研究が必要とされる領域となっています。

放射線障害の症状は?
早期障害
  イメージ画像 被爆後、数週間以内に現れる障害を早期障害と呼びます。
  急性放射線症
     短時間で、全身、あるいは身体の広範囲に、高線量の放射線を被爆すると、被曝線量に応じてさまざまな障害が現れます。このような症状を、急性放射線症と呼びます。
 前駆期は、被曝後最初の48時間以内です。この時に現れる、食欲不振、悪心、嘔吐、倦怠感などの症状を前駆症状と呼びます。
 潜伏期は、前駆期から発症期に至る中間の過程で、疲労感の他には無症状の期間がしばらく続きます。
 発症期は、6Gy(グレイ、呼吸線量のこと)以下の被曝で、放射線感受性の高い骨髄の障害がおもに現れます。骨髄が障害されると、白血球減少、血小板減少、貧血がみられるようになります。皮膚には5Gy以上で紅斑や脱毛、25Gy以上で潰瘍、500Gy以上で壊死が現れます。10Gy以上の被曝では、骨髄障害に加えて、消化管障害が現れ、腹痛、嘔吐、下痢などの症状がみられます。
 数十Gy以上の被曝になると、骨髄や消化管の障害に加えて、中枢神経系の障害が発生し短時間で死亡します。中枢神経系の障害では、感覚鈍麻、興奮、運動失調、痙攣、意識障害などの症状が現れます。
 発症期を乗り越えることができれば、回復期に移行します。
  眼障害
     水晶体は、眼の組織の中でも、もっとも放射線感受性の高い組織です。
 被曝によって水晶体は混濁し、進行すると白内障になります。5Gyの1回被曝、もしくは8Gy以上の分割被曝で白内障が発生します。
  生殖機能障害
     男性では精原細胞(せいげんさいぼう)、女性では卵母細胞(らんぼさいぼう)が、もっとも放射線感受性の高い組織です。
 一時的に不妊の起こる吸収線量は、男性で0.15Gy、女性で0.65Gy〜1.5Gyとなっています。
 永久的に不妊の起こる吸収線量は、男性で3.5Gy〜6.0Gy、女性で2.5Gy〜6.0Gyとなっています。
晩発障害
   被曝線量が低く、死に至らなかった場合、数ヶ月〜数十年後に白血病皮膚ガンなどの悪性腫瘍の発生、白内障や老化の促進などの症状が現れます。
 このような状態を、晩発障害と呼びます。
 わずかな被曝線量でも、長期間被曝することによって遺伝的影響と発ガン性がもっとも問題となります。
後世代的障害
   奇形などの胎児障害や、染色体異常などの遺伝的障害などを後世代的障害と呼びます。成長遅延、胎児死亡、出産後の死亡率増加、形態異常、胎児の将来の発ガン性リスクの上昇などがあります。
 放射線被曝については、被曝線量、胎児発生の段階(週数)、被曝の回数など、すべて考慮に入れなければなりません。しかし、病院で行う単純エックス線検査、CT検査であれば、ほとんど問題ないと考えてよいでしょう。
 検査別の胎児被曝線量 
検査方法 平均被曝線量 最大被曝線量
単純撮影 頭部 0.01mGy以下 0.01mGy以下
胸部 0.01mGy以下 0.01mGy以下
腹部 1.4mGy 4.2mGy
腰椎 1.7mGy 10mGy
骨盤部 1.1mGy 4mGy
CT 頭部 0.005mGy以下 0.005mGy以下
胸部 0.06mGy 0.96mGy
腹部 8.0mGy 49mGy
腰椎 2.4mGy 8.6mGy
骨盤部 25mGy 79mGy
 下表の「放射線被曝とおもな先天性異常」の見方。しきい値とは、ある線量以上の被曝をすると胎児に影響を与え、それ以下の線量では胎児に影響しないという境界値です。100mGy以下の胎児被曝は、ほとんど問題ないと考えられます。「+++」は感受性が特に高いことを示し、「+」は感受性あり、空欄は感受性なしです。
 放射線被曝とおもな先天性異常 
受精後 着床前期 器官形成期 胎児期 しきい値
0日〜8日 2週〜8週 8週〜15週 15週〜25週 25週以後
流産(胎芽・胎児死亡) +++ +       100mGy以上
形態異常   +++       100mGy〜200mGy
発育遅延   + + + + 100mGy以上(動物実験)
知的障害     +++ +   120mGy
悪性新生物(ガン)   + + + + 50mGy以上
遺伝的影響           1000mGy〜1500mGy(推定)
確率的影響と確定的影響
   悪性腫瘍や遺伝的障害は、被曝線量の増加にともなって発生頻度が高くなります。これを確率的影響と呼びます。
 骨髄障害、皮膚障害、眼障害、性腺機能障害などは、ある一定量以上の被曝で発生します。これを確定的影響と呼びます。

放射線の限度量と医療で使う放射線は?
放射線被曝の限度量
   放射線の被曝は、できるだけ少ないことに越したことはありません。
 国際放射線防護委員会(ICRP)では、やむを得ない場合の上限値として放射線の線量限度の勧告を行っています。
 1990年(平成2年)、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告によると、放射線作業従事者は5年間で100mSv(100ミリシーベルト)、かつ1年間で50mSv(50ミリシーベルト)となっています。一般公衆(医療行為とは別)では1年間で1mSv(1ミリシーベルト)となっています。
医療で使う放射線
   放射線による検査や診断における被曝量は、検査の種類、身体の部位にもよりますが、多くはひとつの検査につき0.1mSv〜数mSvというわずかなものです。
 放射線療法では、ガン細胞に最大のダメージを与えて、健康な細胞には最小限の影響しか与えないように被曝線量は決まっています。
 1日あたり2Gy(2グレイ)、週5日、6週間の計30回で合計60Gy(60グレイ)が標準線量であり、最大線量です。ただしガンの種類や大きさ、進行度によって線量は決定されます。
シーベルトとグレイ
   Sv(シーベルト)は、放射線が人体に与える影響を計る単位で、線量当量です。
 Gy(グレイ)は、生体に吸収されるエネルギー量を表す単位で、吸収線量です。

放射線障害の治療法は?
まず被曝からの離脱
  イメージ画像 電離放射線の被曝からの離脱がもっとも重要です。
 各障害では、重症度に応じた治療が必要です。

放射線障害かなと思ったら?
内科へ
  イメージ画像 もし被曝してしまったら、内科を受診するようにします。自覚症状の有無などの問診、皮膚や眼などの身体的検査、白血球数や赤血球数などの血液検査を受ける必要があります。

放射線障害の予防法は?
被曝を避けよう
  イメージ画像 根本的な治療法がないため、予防することが重要です。無用な被曝は避けることです。

放射線障害に関連する病気は?
放射線障害に関連する病気
  イメージ画像 事故などによる放射線被曝によって起こる放射線障害、事故や放射線治療によって起こる放射線皮膚炎放射線肺炎、放射線の影響を受けやすい腸管粘膜に起こる放射線腸炎などがあります。この他にも、放射線角化症、放射線膀胱炎などがあります。
 通常、放射線治療によって発症しますが、原子力発電所や放射線を取り扱う機器の事故によって被曝し、発症することもあります。
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