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日本脳炎


日本脳炎の概要は?

おもな症状

 

発熱
項部硬直(こうぶこうちょく)
頭痛
胃腸症状
意識障害
痙攣(けいれん)
異常運動
精神障害

感染症法による分類

 

4類感染症(全数把握、7日以内の届出)


日本脳炎ってどんな病気?

コガタアカイエカ

 

イメージ画像 コガタアカイエカによる日本脳炎ウイルスを持った蚊に刺されることによって感染します。
 インド、タイなどのアジア地区での流行は小児に多発していますが、日本ではおもに成人と高齢者によくみられます。
 病理学的には、日本脳炎の好発部位は大脳、視床(ししょう)、脳幹(のうかん)、脊髄(せきずい)などとされています。組織学的には、細胞浸潤(さいぼうしんじゅん)、グリア結節、軟化巣(なんかそう)などの特徴がみられます。
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日本脳炎以外のさまざまな類縁脳炎

 

 同じRNAフラビウイルスに属する脳炎としては、ダニが媒介する中央ヨーロッパ脳炎、ロシア春夏脳炎などがあります。1997年に函館で、ロシア春夏脳炎の発症例が報告され、北海道でも発生すると注意喚起されています。
 ほかにも、オーストラリア北部ではマレー渓谷脳炎、エジプトではウエストナイル脳炎があり、北米大陸ではセントルイス脳炎、カリフォルニア脳炎などがあります。


日本脳炎の原因は?

日本脳炎ウイルス

 

イメージ画像 RNA型の小型の球形ウイルスである日本脳炎ウイルスが原因になります。体内で増えたウイルスが、脳や脊髄に入って起こす病気です。
 日本脳炎ウイルスは、おもにブタの体内で大量に増えて、その血を吸った蚊が感染し、ウイルスを持ちます。蚊が活動する7月〜9月初旬にかけて、関東以西の地域で発生します。
 日本での日本脳炎患者数は、1990年以降は年間約10人程度で推移しています。一方、インドやタイなどのアジア地区では、現在でも年間1000人を超える大流行がみられます。

患者数増加の可能性アリ

 

 日本ではまれな病気になっていますが、日本脳炎ウイルスを広めるコガタアカイエカの活動は確認されています。
 かつ、ワクチン接種が減少している現状を考慮すると、再び増加に転じる可能性があります。


日本脳炎の症状は?

意識障害や麻痺など

 

 日本脳炎の前駆症状としては、違和感、全身倦怠感がみられます。蚊に刺されてウイルスに感染してから、6日〜16日くらいから、症状があらわれます。
 急性期では、発熱、意識障害、頭痛、項部(うなじ部分)の硬直などがあらわれます。
 固縮、振戦(しんせん)、不随意運動(ふずいいうんどう)などの錐体外路兆候がみられます。片麻痺、四肢麻痺などの運動麻痺も特徴的な症状とされています。

どの脳炎も症状は似ている

 

 インドなどのアジア地区の流行例では、脳症、脊髄炎、ギラン・バレー症候群などの症状が報告されています。
 どのウイルスによる脳炎でも、蚊が媒介するしないに関わらず、症状はよく似ています。

人によっても症状が違う

 

 日本脳炎ウイルスといっても、脳炎だけを起こすわけではありません。髄膜炎の症状だけで回復する場合もあります。脊髄炎を起こすこともまれにあります。
 ウイルスを持った蚊に刺されても、発症する人は300人に1人程度です。


日本脳炎の診断は?

血液、髄液、CT、脳波

 

イメージ画像 血液検査では、赤沈亢進、C反応性蛋白上昇などの炎症所見がみられます。
 髄液では、初期から細胞数増加、蛋白増加、糖は正常から軽度の増加がみられます。
 CT、MRI画像での、視床、基底核、脳幹病変は特徴的とされています。
 脳波は、急性期高振幅徐波(きゅうせいきこうしんぷくじょは・振幅の大きな緩やかな脳波)を示します。

さまざまな検査

 

 7月〜9月初旬の発症時期、臨床症状、日本脳炎ウイルスに対するペア血清で補体結合抗体、赤血球凝集抑制価の4倍以上の上昇などを参考にして診断します。
 血清・髄液からの酵素抗体法によるIgM抗体の検出、さらにPCR法による日本脳炎ウイルスゲノム(遺伝子)が検出されれば、確定的とされています。


日本脳炎の治療法は?

抗ウイルス薬はありません

 

 意識障害などが重い急性期の治療が大切になってきます。痙攣、呼吸管理などに迅速に対応する必要があります。
 治療が長期化することが多いので、肺炎などの合併症の予防や、早期発見も重要です。
 死亡率は約30%で、後遺症には痴呆、パーキンソン症状パーキンソン病、四肢麻痺などが残ります。
 現在のところ、特異的な抗ウイルス薬は存在せず、全身管理、脳浮腫対策が主体です。副腎皮質ステロイド薬の有効性は確認されていません。

抗ヘルペスウイルス薬のみ開発されています

 

 ほとんどのウイルス性脳炎は、ウイルスそのものに対する治療薬は存在しません。しかし、ヘルペスウイルスに対しては、抗ヘルペスウイルス薬があるので、ヘルペス脳炎かどうかの診断も行います。

ワクチン予防が有効

 

イメージ画像 日本脳炎には、韓国、台湾、東南アジアなどでも広く使われている不活化ワクチン(ウイルスを殺したワクチン)が有効です。日本では小児への定期接種がすすめられています。

 

T期

   

 初回は生後6ヶ月以上、90ヶ月未満(3歳が標準的)の幼児に、1週間〜4週間の間隔で2回、接種します。
 T期の初回終了後、約1年後(4歳が標準的)に追加で1回、接種します。

 

U期

   

 9歳以上13歳未満(小学校4年生が標準的)で、1回、接種します。

 

V期

   

 14歳以上15歳以下(中学2年生が標準的)で、1回、接種します。

 

 不活化ワクチンの効果は4年〜5年で効果が薄れていくため、流行地域に行く場合も、事前に予防接種を行うことがオススメです。


脳脊髄液・脊髄液の検査法

髄膜炎・脳炎の診断

 

 脳、脊髄になんらかの障害が生じた場合、直接的、あるいは間接的に、髄液所見に反映される可能性が大きくなります。
 髄液の異常は、髄膜炎・脳炎の診断と鑑別・見分けのために行ないます。

腰椎穿刺

 

イメージ画像 一般的に針を刺して行なう腰椎穿刺(ようついせんし)によって行なわれます。
 患者さんは側臥位となり、両手で膝を頭に抱え込むような体位をとります。もし介助するときは、この姿勢をきちんと保つことが重要です。
 穿刺部位は、左右の腸骨綾上縁を結ぶヤコビー線と、脊柱が交差する点を目標にして、第3腰椎〜第4腰椎間か、第4腰椎〜第5腰椎間で行ないます。皮膚消毒と局所麻酔後、棘間靭帯(きょくかんじんたい)、硬膜(こうまく)、くも膜下腔へと針を入れていきます。
 外観の観察、初圧および終圧、細胞数、蛋白、糖、血糖値の測定を行い、疑われる疾患に応じて種々の検査を追加します。

怖かった・・・

 

 僕も何度か脊髄液検査を受けたことがあります。
 背中で行なわれているために、何をやっているのか見えませんが、膝を抱えて横になって寝たまま動いてはいけないという姿勢が、とても不安で心細かったです。
 とても怖い経験でした。


日本脳炎かなと思ったら?

家族も同伴で病院へ

 

 日本では、日本脳炎の発症は7月〜9月初旬にかけてです。
 診断には、発熱、意識障害、大脳巣症状(片麻痺、パーキンソン症状など)などの起こり方を聞く必要があります。意識障害のある患者さんからでは聞き取りにくいので、家族や同居人から症状を聞く必要があります。

子供の日本脳炎

 

イメージ画像 発熱性の疾患では、高熱だけで心配する必要はありません。痙攣も多くの場合は、2分〜3分で治まる熱性痙攣なので、体を横にして楽な姿勢をとらせて様子をみます。嘔吐があると誤嚥の危険があるので、顔は横に向けて吐物が喉に詰まらないようにします。
 痙攣が治まっても呼吸が不規則だったり、顔色が悪いままだったり、痙攣が10分以上続いたり、何度も繰り返す場合は、すぐに入院施設のある小児科医の病院を受診しましょう。外来診療だけでは手遅れになる場合もあります。
 日本では子供が日本脳炎を発病することはほとんどなく、予防接種の必要性も否定されがちです。しかし、北海道以外では夏になると日本脳炎ウイルスに感染したブタが多数出ているので、定期接種を忘れないようにしましょう。

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