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溶血性貧血 血小板減少 急性腎不全
急性腎不全 慢性腎不全
溶血性尿毒症症候群は、腎臓や脳などを侵す病気です。 ほとんどが小児に発症し、腎臓の毛細血管内皮細胞を破壊し、そこを通過する赤血球を破壊することで溶血が起き、急性腎不全となり、尿毒症を発症します。赤血球の破壊による貧血、出血を防ぐ細胞の血小板の減少などを引き起こします。 脳に症状が現れると、痙攣(けいれん)を起こしたり、意識を失うこともあります。 抵抗力の弱いお年寄り、乳幼児や子供に多い病気です。夏〜秋にかけて、多い病気です。
溶血性尿毒症症候群は、しばしばHUSと略されます。
ほとんどの場合、腸管出血性大腸菌(O157:H7)に汚染された食品を食べることが原因で発症します。O157は、人の腸内でベロ毒素という毒素を放出し、これが血液中に進入しさまざまな症状を引き起こします。 本来はベロ毒素を生成しない大腸菌でしたが、赤痢菌のDNA断片が大腸菌にウイルス感染し、ベロ毒素生成能力を得たと考えられています。100個程度という極めて少ない菌で感染します。そのため、感染者の便から容易に二次感染が起こります。 溶血性尿毒症症候群は、O157による病原性大腸菌食中毒の合併症です。
1982年、アメリカで初めてO-157による食中毒が特定されました。 1996年、大阪府堺市では、7000人以上のO-157感染の大流行があり、3人の患者さんが死亡しました。 その後も毎年、発症例が報告されています。
先天的な原因によるケースもあります。
HIV感染、抗リン脂質抗体症候群、分娩後腎不全、悪性高血圧、全身性強皮症、抗がん剤治療などの合併症として発症することがあります。
溶血性尿毒症症候群の初期症状は、発熱、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの胃腸炎症状で始まります。下痢便には血液が混じる血便となることがほとんどです。 ベロ毒素による脳の症状のため、刺激に過敏になります。重症の場合は、痙攣を起こしたり、意識がなくなり死亡してしまう場合もあります。 貧血のために疲労感を訴える、顔色が悪くなるなどの症状もあらわれます。 急性腎不全になると、尿の量が減少します。
胃腸炎症状の段階では、便の細菌検査をしてO-157の感染を検査します。 O-157による感染がわかると、溶血性尿毒症症候群に進行していないかどうか検査するため、血液検査や尿検査で、貧血、血小板の数、腎機能などの症状を検査します。 O-157の感染では、5日〜10日後に、約5%の子供が溶血性尿毒症症候群を発症します。
胃腸炎の段階では、十分に水分を補給し、脱水状態にならないように注意をします。 強い下痢止めは、細菌や毒素が体内から排泄されるのを遅くする可能性があるため、使用しません。 抗生剤の使用に関しては、意見が分かれています。強力に大腸菌を殺菌すると、毒素の放出が促進される可能性があるためです。
溶血性尿毒症症候群になった場合、約2週間、入院して治療を行います。 貧血の強い場合には、輸血が必要となります。急性腎不全になった場合には、一時的に人工透析が必要になります。 以前は治療法がわからず、死亡率の高い病気でしたが、現在では95%以上は救命可能な病気となっています。
溶血性尿毒症症候群が回復し、退院しても、長期にわたって腎臓の障害が残ることがあります。そのため、長期間の定期的な診察を受けてください。
発熱とともに、腹痛、血便をともなうような下痢、嘔吐があらわれたら、医師の診察を受けるようにしましょう。便の細菌検査を受けてください。 もし検査の結果、O-157が検出された場合、完治するまでこまめに医師の診察を受けましょう。
溶血性尿毒症症候群の予防には、O-157に感染しないことです。 O-157は、生焼けのひき肉・生肉・レバー・生せんまい(牛の胃)、殺菌処理されていない牛乳やチーズ、汚染された水・井戸水などから感染します。予防のためには、十分な手洗いと、食品の加熱を心がけましょう。また、小さな子供には生肉を与えないようにしましょう。