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 血友病
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血友病の概要は?
おもな症状
  皮下出血・血腫
関節出血・筋肉出血
鼻腔内、口腔内などの粘膜出血
血尿、下血、頭蓋内出血などの各種臓器出血
症状が似ている病気
  血友病以外の血液凝固因子欠乏症
血小板や血管の機能異常症
凝固因子の低下による新生児メレナ・新生児一次性出血症
ビタミンK欠乏症
重症肝障害・播種性血管内凝固症候群
血小板の減少による特発性血小板減少性紫斑病
再生不良性貧血
白血病
血管異常によるシェーンライン・ヘノッホ紫斑病・アレルギー性紫斑病
単純性紫斑病
起こりやすい合併症
  関節の変形や拘縮
片麻痺、癲癇、知的障害、情緒障害
インヒビター(抗体)の発生
肝炎
エイズ・HIV(1985年以前の製剤)

血友病ってどんな病気?
先天性の出血素因
  イメージ画像 血友病は先天性出血素因(せんてんせいしゅっけつそいん)の中でもっとも頻度が高く、男子出生1万人に1人、10万人に6人〜7人の発症頻度です。
 生涯に渡って、皮下血腫(ひかけっしゅ)、関節出血、筋肉出血などの出血症状を繰り返す先天性凝固異常症(せんてんせいぎょうこいじょうしょう)です。
血液凝固反応
   出血が止まるためには、局所の血管が収縮すると共に血小板が粘着・凝集し、引き続き血液凝固反応が起こり、フィブリンという糊状の物質が形成される過程が必要です。
 血液凝固には血小板による一次凝固と、さまざまな凝固因子が段階的に活性化されて進行する二次凝固があります。
 血友病では、二次凝固に関わる血液凝固因子が先天的に欠乏するために出血症状を起こします。
血友病A・血友病B
   第[因子欠乏症の血友病Aと、第\因子欠乏症の血友病Bの2種類に分類されます。発生比率は約5:1です。

血友病の原因は?
遺伝子の変異
  イメージ画像 血友病の原因は、止血に重要な血液凝固第[因子、または第\因子の欠乏、ないしは異常です。
 それぞれ、X染色体上にある第[因子遺伝子、あるいは第\因子遺伝子のさまざまな変異に基づくものです。遺伝子の欠損、挿入、点変異、遺伝子塩基配列における1塩基置換による変異などが考えられます。
 X連鎖劣性遺伝疾患ですが、患者さんの約半数には明らかな家族歴がなく、母親が保因者でない場合もあります。

血友病の症状は?
X染色体上にある遺伝子
  イメージ画像 第[因子遺伝子、および第\因子遺伝子は、ともにX染色体上にあります。X染色体は性染色体で、女性では2本のXX、男性では1本のXYになります。
 X染色体上にあるため、血友病A、血友病Bは、ほとんどが男児に発症する伴性劣性遺伝(はんせいれっせいいでん)で、女性は保因者になります。
おもな症状
   血友病の症状は、出血症状です。
重症型
   因子活性1%以下の重症型では、乳児期のささいな外傷、打撲にともなう皮下血腫、関節出血などで発症します。
 まれに頭蓋内出血などで新生児期に発見されることもありますが、新生児期に出血症状がみられることはまれで、這行(しゃこう・ハイハイや歩行を開始し運動量が増えてくる乳児期後半以降に出血症状で気付きます。
 出血斑、皮下血腫、怪我をしたあと血が止まりにくい、疼痛と腫れをともなう足・膝の関節出血、何回も出血を繰り返すと関節症を引き起こします。歩行ができるようになると、足関節、膝関節、肘関節などの関節内出血、さらに年長になると血尿、筋肉出血がみられるようになります。
 長期的には、関節内出血や筋肉出血を繰り返すと、関節の変形、可動域制限が起こる血友病性関節症が問題になります。
 粘膜出血、筋肉出血、血尿、頭蓋内出血のように、生命を脅かす出血がみられることもあります。
中等症〜軽症
   中等症・軽症の血友病では、出血症状はまれです。
 抜歯や外傷後の止血が困難な時に検査を受け、初めて診断されることもあります。

血友病の診断は?
問診など
  イメージ画像 特徴的な出血症状の観察や、家族歴を良く聴取することで、診断が可能な場合があります。
スクリーニング検査
   血液凝固検査では、出血時間とプロトロンビン時間・PTは正常ですが、全血凝固時間と活性化部分トロンボプラスチン時間・APTTは延長します。出血時間、凝固系、線溶系、血小板系、血管系の検査を行います。
 確定診断には、血中第[因子、または第\因子の活性を測定します。健康な人の各凝固因子活性を100%とし、1%以下なら重症型、1%〜5%なら中等症型、5%〜30%なら軽症型に診断します。
遺伝子検査
   第[因子遺伝子、あるいは第\因子遺伝子の異常を調べる遺伝子診断も行います。
 特に保因者診断では、各因子の活性測定による診断が困難な場合の確定診断に威力を発揮しています。

血友病の治療法は?
凝固因子製剤の補充療法
  イメージ画像 治療の基本は、凝固因子製剤の輸注・補充療法による止血です。常に早期止血が重要となります。
 1983年から導入された家庭輸注療法・在宅自己注射療法はきわめて有効で、出血を繰り返す例では定期投与による血友病性関節症の予防が期待できます。軽度の出血時の投与、あるいは定期的な予防投与を家庭内で自己注射で行うことができます。
 従来の出血時投与から定期的予防投与へと治療の中心が変化し、適切な予防投与によって血友病患者の生活の質(QOL)も向上し、健常者とほぼ同様の生活が可能になってきました。
 重度の出血、大手術を行う場合、第[因子製剤、または第\因子製剤を持続的に静脈内投与する持続輪中療法を行います。
凝固因子製剤
   補充療法では、血友病Aでは第[因子製剤、血友病Bでは第\因子製剤を使用します。現在使用されている凝固因子製剤は、すべてウイルス不活化処理がされているため、止血効果は製剤間で差はありません。
 補充療法での投与量、投与間隔、投与期間は、それぞれ出血部位、程度、血中半減期によってことなります。血中半減期は、第[因子は8時間〜12時間、第\因子は18時間〜24時間です。投与量の計算法は、血友病Aではx%上昇させるために体重1kgあたりx/2単位の第[因子を必要とします。血友病Bではx単位の第\因子を必要とします。
 治療中に10%〜20%の症例で、因子に対するインヒビター・抗体が発生することがあり、このような症例にはバイパス療法としてプロトロンビン複合体、活性型プロトロンビン複合体、リコンビナント第Za因子製剤を使用します。
出血症状 止血因子レベル 1日投与回数 投与期間
軽度 10%〜30% 1回 1日〜2日
中等度 30%〜60% 1回 1日〜3日
重度 60%〜100% 2回 5日〜7日
小手術 60%〜100% 2回 5日〜7日
大手術 100% 2回 10日〜14日
デスモプレシン療法
   デスモプレシン療法は、血管内皮からの内因性第[因子の放出によって血中濃度を上昇させるもので、中等症〜軽症の血友病Aに有効です。
補助的薬物療法
   抗線溶薬(トランサミン)は口腔内の出血、抜歯後の出血には有効ですが、血尿には水腎症(すいじんしょう)を併発する危険性があるため禁忌です。
 鼻出血・鼻血に対しては、鼻腔内タンポン(オキシセル綿型など)による圧迫止血を行う場合もあります。

血友病かなと思ったら?
専門医の正確な診断
  イメージ画像 まず第一に、専門医による正確な診断が必要となります。
 血友病性関節症の防止のためには、早期輸注による止血が重要で、家庭輸注療法・自己注射がきわめて有効です。
日常生活の注意
   いつもと違う頭痛、腰痛、股関節痛が現れたら、すぐに主治医と連絡をとって、必要に応じて補充療法などの治療を受けてください。
 過激な運動や旅行などで、出血が予想される場合には、予防のための補充療法を行います。
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