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基本は薬物療法
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症状が軽いと思っても、放置せずに、すぐに治療を受けることが重要です。医師から入院を指示されたら、従うようにしてください。入院すれば、発病初期に大切な安静を正しく守ることができ、症状が急変しても適切な治療が受けられます。手術が必要な場合、安定期に入ってから手足の麻痺や言語障害などの後遺症に対するリハビリなども受けられます。
発症後、症状が不安定な急性期、それ以上は進行しなくなる安定期に分類できます。
手術が必要な脳動脈破裂によるくも膜下出血を除き、ほとんどの場合、症状に応じた内科的な薬物療法がメインとなります。
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脳出血の治療
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高血圧による脳出血は、大きな小脳出血、脳圧が高く脳室が大きくなっている閉塞性水頭症などを除き、内科的治療が原則となります。
重症の場合、手術を行っても、寝たきりや、植物状態になってしまうことが多いです。救命を目的とする以外は、手術は行いません。
細い針を使って血腫を吸引する血腫吸引術があります。内科的治療と血腫吸引術で、どちらが効果的か、まだ結論は出ていません。
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脳梗塞の治療
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脳梗塞でも、ほとんどが内科的治療を行います。内頸、中大脳、脳底動脈のような太い脳血管に血栓が詰まっても、6時間以内なら、カテーテルを血管内に挿入し、詰まった血栓を薬で溶かす治療が行われます。発症から3時間以内なら、血栓溶解薬t-PAを静脈注射します。
内頸動脈に70%以上の狭窄があれば、細くなっている内頸動脈の傷付いた内膜を切り取る頸動脈内膜摘除術をすることがあります。
治療は早ければ早いほど、効果が期待できます。病院の設備、専門医の人数、受け入れ態勢、時間的制約などがあるため、どの病院でも最適な治療が受けられるわけではありません。
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急性期の治療 |
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脳血管障害を起こしてから2週間以内は、急性期と呼ばれます。
症状が安定せず、すぐに入院し、治療を開始することが重要です。全身症状を改善させるための全身管理と、脳の病変を改善させる薬物療法が中心になります。 |
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全身管理 |
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十分に食事がとれないため、脱水状態になりやすくなります。点滴で水分と栄養を補給し、必要な薬剤も同時に注入します。傾眠や昏睡で意識状態が悪かったり、嚥下障害などで飲食物がとれない場合、チューブを鼻腔から胃に通して、栄養(経鼻経管栄養物)や薬剤を注入します。
胃の圧に押されて、内容物が食堂に逆流し、気管に入って窒息したり、肺炎を起こす可能性があります。胃の中の圧を下げるためにも、チューブは胃の中に留置しておきます。
呼吸状態が悪く、体内が酸素不足になっている場合、酸素マスクや、鼻腔内にチューブを入れて、体内に酸素を送り込みます。酸素不足がひどい場合、チューブを口や鼻腔から気管に入れ、空気の通り道を確保し、人工呼吸器を使用します。
尿失禁がある場合、尿道から膀胱までカテーテルを挿入し、尿を体外に排出させる導尿を行い、尿量や尿の状態を検査します。導尿を続けていると細菌感染を起こしやすいので、陰部をこまめに拭くなどして、常に清潔を保ちます。意識がはっきりしてきたら、早めに自力で排尿できるように膀胱訓練を開始し、カテーテルを抜きます。 |
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薬物療法
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急性期には程度の差はあっても脳がむくむ脳浮腫で、脳圧が高くなります。脳圧降下薬・浸透圧利尿薬を使用します。意識状態が悪い、頭痛や嘔吐が続く、CTで脳圧が高いことがわかった場合、すぐに脳圧降下薬を使います。
脳血栓で症状が進行してくる場合、血栓を溶かす血栓溶解薬、血液を固まりにくくして血栓ができるのを予防する抗凝固薬、血小板凝集抑制薬、抗トロンビン薬などを使います。
脳の血流量は、通常ならば血圧に左右されることなく、一定の範囲内で必要量が保たれる自動調節能があります。脳血管障害で脳が障害されると、自動調節能が破壊され、血圧が上がり、脳の血流を保とうと生理的反応が起こります。血圧を正常値まで下げると、脳へ流れる血流量が減少するので、急性期には合併症の治療のために血圧を下げなければいけない場合を除き、降圧薬は使いません。血圧が異常に高いと、脳浮腫のため血流量が減少するので、一時的に降圧薬を使います。
ストレスで胃・十二指腸潰瘍が発生することがあるので、防止するため抗潰瘍薬を使います。
大声を出して暴れたり、起き上ってベッドから落ちたり転倒する危険があれば、身体を抑制するため鎮静薬を使います。不安感が強かったり、不眠がある場合、精神安定薬や睡眠薬を使い、ストレスを軽減し安静を保ちます。
痙攣が起きていたり、起きる可能性がある場合、抗けいれん薬を使用します。薬を服用できなければ、点滴静注します。
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慢性期の治療
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発症から2週間以上経過すれば、症状は安定します。再発や合併症がなく、発症後4週間以上経過すれば、症状が悪化しない慢性期に移行します。
慢性期には、症状に応じた薬剤の使用と、脳梗塞を起こした原因となる病気の治療が中心になります。
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薬物療法
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再発を予防するため、必要に応じて血小板凝集抑制薬、凝固薬を使います。脳梗塞で血管が詰まった部位、脳出血で血腫ができた部位、その周辺は、血流量が減少しているため、血流量を増加させる脳循環改善薬を使います。
これらの薬は、後遺症で起こる頭痛、頭重感、めまい、しびれ、意欲低下、抑うつ状態なども、改善する効果があります。
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原因疾患の治療
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高血圧、糖尿病、心臓病、脂質異常症、多血症など、原因となった病気の治療をします。再発を予防するために、大切な治療です。
脳動脈瘤、脳動静脈奇形などの場合、治療には手術が必要になります。
タバコを吸う人は、禁煙をします。
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後遺症の治療
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脳血管障害直後で、意識がないような場合、現代医薬が優先されます。
再発の可能性がなくなり、自分で食事ができ、誤飲しない状態なら、漢方療法は現代療法と同等か、それ以上の効果があり、積極的に使用して良いと考えられています。
漢方療法では、血圧降下作用、脂質代謝改善作用など、脳血管障害の危険因子を改善することができます。後遺症としての興奮、頭痛、頭重、肩凝り、めまいなどの症状も、軽減する作用があります。
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