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慢性心不全


慢性心不全の概要は?

おもな症状

 

階段や坂道での息切れ・動悸・疲労感
進行すると平地歩行時や安静時の呼吸困難
重症例では横になっていられない起坐呼吸、咳が出る、ゼーゼーする心臓喘息
動悸、疲労感が強くなる
食欲低下、足のむくみ

似ている病気

 

慢性呼吸器疾患
貧血
ネフローゼ症候群

起こりやすい合併症

 

肺炎
不整脈
脳塞栓(のうそくせん)
心内膜炎(しんないまくえん)


慢性心不全ってどんな病気?

生活習慣病

 

イメージ画像 心臓のポンプ機能が低下するため、全身に十分な酸素が運ばれず、全身の血液の流れが滞るために起こる症候群です。
 さまざまな原因によって発症します。
 場合によっては急性心不全に移行することを繰り返して、少しずつ進行していくことがある病気です。年齢の上昇にともなって増える病気で、生活習慣病でもあります。

右心不全・左心不全・両心不全

 

 症状の面からは、血液が滞る状態のうっ血を起こす右心不全(うしんふぜん)と、肺にうっ血し全身へ送られる血液が減少する左心不全(さしんふぜん)に分類されます。通常は、両方が同時に起こって両心不全(りょうしんふぜん)となります。
 心房細胞(しんぼうさいぼう)、心室性期外収縮(しんしつせいきがいしゅうしゅく)などの不整脈を合併することが多々あります。

5年

 

 原因と経過によって異なりますが、5年で約半数の患者さんが亡くなります。


慢性心不全の原因は?

心筋梗塞や高血圧

 

イメージ画像 急性心筋梗塞(きゅうせいしんきんこうそく)、高血圧がよくみられる原因です。
 拡張型心筋症(かくちょうがたしんきんしょう)、弁膜症(べんまくしょう)も原因となります。拡張型心筋症はどの年齢でもみられますが、高齢者で増えています。弁膜症は、虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)、動脈硬化にともなって起こるものが増えています。

さまざまな原因

 

 そのほかにも、頻脈性不整脈(ひんみゃくせいふせいみゃく)、徐脈性不整脈(じょみゃくせいふせいみゃく)も、慢性心不全の原因となります。
 糖尿病睡眠時無呼吸症候群も心不全を引き起こす危険因子です。


慢性心不全の症状は?

右心不全

 

イメージ画像 全身に血液がうっ滞する右心不全の症状は、足を中心とするむくみが現れ、体重が増加します。
 むくみは夕方になると強くなり、靴がきつくなることで気が付くこともあります。

左心不全

 

 左心不全の症状は、呼吸困難、咳、白っぽい泡のような痰です。
 呼吸困難は階段の昇り降り、坂道などで起こります。動悸(どうき)を感じることもあります。

呼吸困難

 

 心不全で特徴的な呼吸困難は、就寝後しばらくしてから現われる息苦しさです。夜間発作性呼吸困難症と呼ばれています。
 この症状は、起き上がることで軽減されます。

尿量

 

 慢性心不全の初期症状としては、夜間の多尿が現われます。しかし、重症になると、逆に尿量は減少します。

全身症状

 

 全身的な症状としては、倦怠感(けんたいかん)、疲れやすさがよく現われます。ほかにも、消化器症状として食欲不振、腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)も現われます。


慢性心不全の診断は?

診察と検査

 

イメージ画像 慢性心不全の診断は、詳細に症状を聞き取り、診察をすることで可能です。
 検査として必ず行われるのは、胸部エックス線検査、心電図、心エコー(超音波)が行われます。原因と重症度を知る上で、心エコー検査はとくに重要な検査となります。

血液検査

 

 血液検査では、ホルモンのひとつである脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は、心不全の重症度を反映して上昇します。
 また、肝臓、腎臓の病気を合併することがあるため、血液検査は重要な検査となっています。

心電図

 

 不整脈の様子を知るために、ホルター心電図検査を行います。
 原因として冠動脈硬化が疑われる場合は、心筋シンチグラフィ、冠動脈造影検査(心臓カテーテル検査)が行われます。


慢性心不全の治療法は?

一般的治療法

 

イメージ画像 一般的な治療法としては、安静、飲水、塩分制限、酸素吸入を行います。

薬物療法

 

 薬物療法としての基本は、利尿薬、ジギタリス、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、抗アルドステロン薬を使います。患者さんの状態に合わせて、段階的に使っていきます。
 β遮断薬は、低下した心臓の機能を回復させる薬です。しかし副作用として、低血圧、徐脈、喘息などがあり、一過性に心不全を悪化させてしまうこともあります。心不全の状態が安定したところで、慎重に少量から始めて徐々に増やしていきます。
 強心薬は、一時的に心臓の働きを強くします。しかし、長期間にわたって使用していると、心不全を悪化させてしまうことがわかってきました。

在宅酸素療法

 

 在宅酸素療法(HOT)は、有効な治療法です。
 睡眠時無呼吸症候群の患者さんには、持続陽圧呼吸(CPAP)が行われ、心不全の改善にも効果的です。

外科的治療法

 

 心不全にはさまざまな原因があるので、原因に対しての治療も行います。
 虚血性心疾患の患者さんには、バイパス手術、風船療法による冠動脈血行再建を行います。弁膜症に対する外科治療、不整脈に対する抗不整脈薬、カテーテルアブレーション、ペースメーカーなどを使用します。

心臓移植

 

 どの治療を行っても心不全の改善がみられない重症患者さんには、心臓移植が検討されます。


心臓移植とは?

重症患者さんの治療法

 

イメージ画像 さまざまな治療法がありますが、どれも改善が見込めない重症慢性心不全の治療法です。
 臓器提供者の脳死ドナーからの提供があって、初めて成り立つ治療法です。現在はドナーの数が限られているため、心臓移植の必要性を外部機関で検討し、日本臓器移植ネットワークに登録をして待機します。

人工心臓

 

 近年、人工心臓が進歩しましたが、まだ長期間にわたって使用することはできません。ほとんどが、移植ドナーが現われるまでの間をしのぐために使用されます。

心臓移植の対象

 

 心臓以外に重大な疾患のない、比較的若い人が、心臓移植の対象となります。移植を受けた人の生活の質(QOL)は著しく上昇し、過半数の患者さんが10年以上生存しています。
 現在の法律では、小児の移植を行うことはできません。

心臓移植のリスク

 

 心臓移植のリスクとしては、急性拒絶反応を予防するために、免疫抑制薬を飲み続けなければなりません。そのため、感染症などの副作用に対して、常に注意が必要となります。
 また、数年の経過で慢性拒絶反応といわれる冠動脈硬化があらわれることが問題となっています。


慢性心不全かなと思ったら?

検査もあるので一度は入院

 

イメージ画像 初期の心不全は、診断が難しい場合があるので、専門医の診察を受けましょう。
 心不全と診断されたら、食事、運動制限などの一般的な治療法。また、薬物療法についての説明を受けましょう。
 軽症では外来治療が可能です。ですが基本的には、原因の診断もあるので、入院加療となります。

生活習慣に気をつける

 

 一時的に症状が治まっても、過労、ストレス、暴飲暴食、薬剤の中断、風邪などで、症状が悪化することがよくあります。症状に応じて、日常生活に気をつけることが大切です。

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