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ネフローゼ症候群


ネフローゼ症候群の概要は?

おもな症状

 

むくみ
大量の蛋白尿
尿量減少

似ている病気

 

肝硬変

起こりやすい合併症

 

低蛋白血症(ていたんぱくけっしょう)
腹水


ネフローゼ症候群ってどんな病気?

大量の尿蛋白

 

イメージ画像 ネフローゼ症候群は、大量の蛋白尿が出て、それにともなって血液中の蛋白質が減少します。そのため、浮腫・むくみ、コレステロールなどの脂質の上昇などが現れる病気です。

一次性ネフローゼ症候群

 

 ネフローゼ症候群には、さまざまな腎疾患が含まれていて、ひとつの疾患ではありません。
 一次性ネフローゼ症候群・原発性ネフローゼ症候群は、原発性糸球体疾患によるネフローゼ症候群です。

原因疾患名 頻度
微小変化型ネフローゼ症候群 約40%
巣状糸球体硬化症 10%
メサンギウム増殖性糸球体腎炎 15%
膜性腎症 約25%
膜性増殖性糸球体腎炎 5%
その他 5%

二次性ネフローゼ症候群

 

 二次性ネフローゼ症候群・続発性ネフローゼ症候群は、糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)、膠原病(こうげんびょう)、アミロイドーシスなどの全身疾患によるネフローゼ症候群です。

二次性ネフローゼ症候群の原因疾患
全身疾患に伴う腎障害 糖尿病性腎症、ループス腎症、アミロイド腎症、紫斑病性腎炎、クリオグロブリン血症
遺伝性疾患 先天性ネフローゼ症候群、アルポート症候群
肝疾患 B型肝炎、C型肝炎、肝硬変
悪性腫瘍 各種固形ガン、白血病悪性リンパ腫多発性骨髄腫
感染症 細菌(MRSA、梅毒など)、エイズ、原虫(マラリアトキソプラズマ
心疾患 感染性心内膜炎、うっ血性心不全
薬物 金属剤、D-ペニシラミン、非ステロイド性抗炎症薬
過敏症 ヘビ毒、ハチ毒ウルシ
その他 妊娠中毒症、腎静脈、下大動脈血栓症

その他

 

 微小変化型ネフローゼ症候群は、15歳以下に多く発症するネフローゼ症候群です。
 50歳以上になると、膜性腎症を中心とした他の組織型の頻度が増加します。


ネフローゼ症候群の原因は?

高度な尿蛋白

 

イメージ画像 糸球体基底膜のおもにアルブミンからなる高分子蛋白の透過性亢進によって、高度な尿蛋白が認められます。このため、低蛋白血症になります。
 浮腫・むくみの原因としては、大量の蛋白尿喪失による血漿膠質浸透圧(けっしょうこうしつしんとうあつ)の低下、循環血漿量の増加などが考えられています。

子供の場合

 

 成人では膠原病などの全身疾患にともなって起こる二次性ネフローゼ症候群が多いのに対し、子供では腎臓に直接原因があって発症する一次性ネフローゼ症候群が90%を占めます。
 大半は腎臓の組織にほとんど変化のない、微小変化型です。好発年齢は2歳〜6歳です。
 頻回に再発する例が多いのですが、慢性腎不全に至るケースはありません。


ネフローゼ症候群の症状は?

顔や手足のむくみ

 

イメージ画像 顔や手足に浮腫・むくみが認められます。
 ときに全身浮腫が著しくなり、胸や腹に水がたまる胸水・腹水になることもあります。
 尿が出にくくなり、腎機能の障害、血圧の低下を認めることもあります。

血液が凝固しやすい

 

 ネフローゼ症候群の患者さんの血液は固まりやすい状態にあるので、腎静脈や下肢深部静脈に血栓性静脈炎を起こすことがあります。


ネフローゼ症候群の診断は?

診断基準

 

 ネフローゼ症候群の診断基準を満たせば、原因にかかわらずネフローゼ症候群と診断されます。

ネフローゼ症候群の診断基準
尿蛋白量:1日の尿蛋白量は3.5g以上を持続する
低蛋白血症:血清総蛋白量は6.0μ/dl以下
低アルブミン血症とした場合は血清アルブミン量は3.0g/dl以下
高脂血症:血清総コレステロール値250ml/dl以上
浮腫
尿蛋白量、低蛋白血症(低アルブミン血症)は必須条件です
高脂血症、浮腫は必須条件ではありません
尿沈渣中、多数の卵円形脂肪体、重屈折脂肪体の検出は診断の参考になります
尿蛋白の持続は3日〜5日以上のこと

小児ネフローゼ症候群

 
小児ネフローゼ症候群の診断基準
尿蛋白量 1日の尿蛋白量は3.5g以上を持続
1日の尿蛋白量が0.1g/kg以上を持続
早朝の起床第1尿で300ml/dl以上を維持
低蛋白血症 総蛋白量
  学童・幼児で6.0g/dl以下
  乳児で5.5g/dl以下
アルブミン
  学童・幼児で3.0g/dl以下
  乳児で2.5g/dl以下
高脂血症 血清総コレステロール値
  学童で250mg/dl以上
  幼児で220mg/dl以上
  乳児で200mg/dl以上
浮腫
尿蛋白量、低蛋白血症(低アルブミン血症)は必須条件です
高脂血症、浮腫は必須条件ではありません
尿沈渣中、多数の卵円形脂肪体、重屈折脂肪体の検出は診断の参考になります
尿蛋白の持続は3日〜5日以上のこと

尿検査

 

 尿所見では、一般的に大量の蛋白尿が認められます、時に1日に20g以上になります。
 そのほか、血尿は微小変化型では通常は認められません。他の疾患では、いろいろな程度の顕微鏡的血尿が認められます。卵円形脂肪体、脂肪変性した腎上皮細胞などが認められます。

血液検査

 

イメージ画像 血液検査では、総蛋白、アルブミンの低下、高コレステロール血症などが認められます。
 腎機能は正常から、低下例まで、さまざまです。

尿蛋白中の選択性検査

 

 尿中蛋白の状態を知る検査方法としては、尿蛋白中のIgGとトランスフェリンのクリアランス比を検査する選択性検査があります。
 選択性検査は、原疾患の鑑別や、副腎皮質ステロイド薬による治療への反応性の予測に用いられます。

腎生検

 

 一次性ネフローゼ症候群の原疾患の確定診断には、組織の一部を採取して調べる腎生検が必要になります。
 二次性ネフローゼ症候群でも、確定診断や治療法を決定するために、腎生検を行うことがあります。


ネフローゼ症候群の治療法は?

入院して治療を受けます

 

イメージ画像 入院安静が原則です。
 食事療法では、浮腫に対しては水分と塩分の制限を行います。蛋白摂取量の制限が推奨されています。

一次性ネフローゼ症候群

 

 一次性ネフローゼ症候群では、薬物療法としてステロイド薬を用いることが多いです。治療効果は病型や重症度によって異なります。
 効果があっても、また再発してしまうこともあります。
 ステロイド薬の投与は長期間になることが多いため、耐糖能障害、感染症、骨粗鬆症、消化性潰瘍、高血圧、精神症状などの副作用に注意します。

難治性ネフローゼ症候群

 

 難治性のネフローゼ症候群に対しては、免疫抑制薬を併用することがあります。骨髄抑制、性腺障害、催腫瘍性(さいしゅようせい)などの副作用があるので、注意が必要になります。
 抗血小板薬、蛋白尿減少作用が認められるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンU受容体拮抗薬などの降圧薬を投与します。

二次性ネフローゼ症候群

 

 二次性ネフローゼ症候群に対しては、基礎疾患に対する治療が優先されます。

続発性ネフローゼ症候群

 

 続発性ネフローゼ症候群に対しては、高脂血症に対して抗高脂血症薬を投与します。
 浮腫に対しては、利尿薬が使用されます。
 高度な浮腫、胸水、腹水、末梢循環不全状態に対してアルブミン製剤をしようすることがありますが、効果は一時的です。尿蛋白量の増加によって、腎障害を助長することがあるので、注意が必要です。
 機械を使用した血液濾過法を行うこともあります。

微小変化型ネフローゼ症候群

 

 小児の微小変化型ネフローゼ症候群は、ステロイド薬の使用が効果的で、90%以上の患者さんで尿蛋白が陰性化する完全寛解します。成人でも、約75%で完全寛解が得られます。7日〜10日で尿蛋白は改善します。
 しかし、約60%の患者さんで再発が認められます。約30%の患者さんでは頻回に再発しますが、腎不全への進行は極めてまれで、予後は良好です。
 副腎皮質ステロイド薬を大量に使うので、高血圧、消化管潰瘍、低カリウム血症、緑内障白内障骨粗鬆症などのさまざまな副作用に注意する必要があります。

その他のネフローゼ症候群

 

 他のネフローゼ症候群では、一般的にステロイド抵抗性があり、ステロイド薬の投与があまり効果がないことが多いです。効果が得られない場合は、慢性糸球体腎炎を疑い、組織を取って調べる腎生検を行います。
 巣状分節状糸球体硬化症(そうじょうぶんせつじょうしきゅうたいこうかしょう)、膜性腎症などでは、約70%でステロイド抵抗性があります。10%〜20%では副腎皮質ステロイド薬が効かず、巣状糸球体硬化症が多く、予後は不良です。
 ネフローゼ状態が続くと、徐々に腎機能障害が認められるようになります。


副腎皮質ステロイド薬とは?

糖質コルチコイドの作用
   一般に副腎皮質ステロイド薬と呼ばれる薬は、糖質コルチコイド作用を持つ薬剤のことです。
 血糖を上昇させる、脂肪や蛋白を分解、炎症や免疫を抑える、血圧を上昇させるなど、さまざまな作用があります。
 このため、抗炎症作用や免疫抑制作用を期待して、喘息、アトピー、関節炎をはじめ、さまざまな病気の治療に使用されています。
急に中止してはダメ
   ステロイド薬の効果は強力ですが、副作用が多いので慎重に使わなくてはいけません。
 糖尿病、感染症、胃潰瘍骨粗しょう症、精神症状、高血圧など、実に様々な副作用があります。
 長期間、大量にステロイド薬を使用した場合、副腎が委縮してしまっているので、急に使用を中止すると急性副腎不全を起こしてしまうためとても危険です。
 薬の使用を中止する場合、必ず医師の指示に従って、少しずつ減らしていくようにしてください。

ネフローゼ症候群かなと思ったら?

入院が必要です

 

イメージ画像 高度な蛋白尿や浮腫が認められた場合は、ネフローゼ症候群を疑います。
 子供の場合は小児科、成人の場合は内科か腎臓内科を受診するようにしてください。

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