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 細菌性肺炎
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細菌性肺炎ってどんな病気?
肺胞の炎症
  イメージ画像 肺炎とは、気管支よりも末梢の酸素と二酸化炭素を交換する肺胞(はいほう)と呼ばれる部位に起こる感染をともなう炎症です。
 肺が空気を出入りさせるために、気管→気管支→細気管支という順に次第に細く枝分かれし、もっとも奥にあるのが肺胞です。肺胞は直径約0.3mmの小さな部屋が約3億存在し、その薄い壁にある毛細血管を介してガス交換が行われます。
 肺胞は気道と繋がっているので、同時に気管支炎も併発します。
 肺炎では、肺胞まで病原菌が浸入し、病原菌に対して身体の免疫機能が働き、炎症性の細胞や浸出液(しんしゅつえき)が肺胞内に満たされた状態になります。
 エックス線検査を行うと、肺の浸潤影(しんじゅんえい)と呼ばれる陰影が映ります。
 肺炎では肺胞に空気が入らなくなるため、ガス交換が不可能になり、流れ込んだ静脈血は酸素を取り込めないまま心臓に戻ります。肺炎が肺の広い範囲に広がると、動脈血の酸素が不十分になり、呼吸困難が起こり、時には生命が危険になります。
細菌が原因の肺炎
   細菌性肺炎では、肺炎の原因となる微生物が細菌だということです。
 肺炎の中でも、もっとも頻度の高い肺炎です。
院内肺炎と市中肺炎
   肺炎は、病院に入院している人に起こる院内肺炎(いんないはいえん)、病院外で起こる市中肺炎(しちゅうはいえん)とに分類されます。
 院内肺炎と市中肺炎では、原因となる細菌の種類が異なるため、治療に使われる抗菌薬も異なります。
侮ってはいけない病気
   日本国内の肺炎の死亡率は、2007年(平成19年)で、人口10万人に対して75.3人です。死因順序は第4位の位置を占めています。
 高齢になるに従い死亡率は急激に増加し、85歳以上の男性では死因第2位、90歳以上の男性では死因第1位となっています。肺炎は、過去50年以上にわたって、日本人の死因の第4位を占めているので、きわめてありふれた病気といえます。

細菌性肺炎の原因は?
経気道感染と血行性感染
  イメージ画像 細菌性肺炎では、肺胞まで細菌が到達していることが第一条件となります。その経路のほとんどは、気道を通って侵入する経気道感染です。
 風邪などから咽頭炎や喉頭炎になり、さまざまな細菌が集まり気管支炎を起こすことが多くなります。その時、身体の抵抗力が弱まったりしていると、細菌性肺炎になることがあります。
誤嚥性肺炎
   経気道感染では、誤嚥が原因の誤嚥性肺炎が多いと考えられています。
 誤嚥には、明らかな「むせ」の見られる場合もありますが、気付かないうちに気道の方に口腔内容物が流入していることも多いと考えられています。
 脳出血脳梗塞などの脳血管障害の既往歴のある人、寝たきりの人、神経疾患にかかっている人などが、誤嚥を起こしやすいと言われます。
血行性感染
   まれに、血液の循環を介して肺胞に到達し肺炎を起こす、血行性感染もみられます。
肺に持病のある人や喫煙者
   もともと肺に慢性の病気を持っている人、喫煙などで気道に障害のある人は、侵入してきた異物を除去する機能が低下しているため、肺炎になりやすい傾向があります。
 重症化もしやすいので、注意が必要です。
原因菌
   細菌性肺炎の原因菌でもっとも多いのは、肺炎球菌です。次いで、インフルエンザ菌です。その他、黄色ブドウ球菌、クレブシエラ菌が原因となります。
 肺炎球菌は、健康な人にも肺炎を起こす細菌です。クレブシエラ菌は、アルコール依存症糖尿病、高齢者に多い肺炎です。黄色ブドウ球菌は、冬のインフルエンザウイルス感染の後に見られることがあります。慢性気管支炎、びまん性汎細気管支炎、気管支拡張症などを持つ患者さんでは、インフルエンザ菌、肺炎球菌、モラキセラ(ブランハメラ)、緑膿菌(りょくのうきん)による肺炎の頻度が高くなっています。
 発症前に抗菌薬が使用されていると、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの耐性菌、マクロライド系抗菌薬・ニューキノロン系薬耐性菌の頻度が高くなります。
 市中肺炎のおもな原因微生物 
順位 微生物 頻度 治療薬
1位 肺炎球菌 22% ペニシリン、レスピラトリーキノロン、マクロライド、セフェム系
2位 インフルエンザ菌 19% ペニシリン、第3世代セフェム、ニューキノロン
3位 マイコプラズマ 14% テトラサイクリン、マクロライド
4位 クラミジア 11% テトラサイクリン、ニューキノロン
5位 レジオネラ 3% マクロライド、テトラサイクリン、ニューキノロン、リファンピシン
6位 黄色ブドウ球菌 3% 第1世代セフェム、耐性菌はバンコマイシン
7位 ミレリグループ連鎖球菌 2% ペニシリン、マクロライド、セフェム系
 院内肺炎のおもな原因微生物 
順位 微生物 頻度 治療薬
1位 緑膿菌 20% 第3世代セフェム、カルバペネム、ニューキノロン、モノバクタム、アミノ配糖体
2位 MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌) 20% バンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリド、アルベカシン、ニューキノロン
3位 緑膿菌以外のグラム陰性細菌 10%〜20%  
4位 クレブシエラなど 10% 第2世代セフェム、第3世代セフェム、アミノ配糖体

細菌性肺炎の症状は?
発熱、咳、痰
  イメージ画像 初期では風邪様症状で、発熱、咳、膿性(のうせい)の痰がみられます。初期のうちに適切な抗生物質を服用しておけば、肺炎への進行はほとんど防ぐことができます。
 肺炎になると、発熱は38℃〜39℃になります。痰は粘性膿性から、のちに特異的な錆色の痰に変化します。
 さらに、胸痛がみられることもあり、この場合は胸膜(きょうまく)への炎症の広がりを示唆しています。肺に水が溜まる、胸水と呼ばれますが、正式な病名は胸膜炎と呼びます。さらに、膿が溜まると膿胸になります。
 全身倦怠感、食欲不振、呼吸数の増加、脈拍の増加がみられます。
重症肺炎
   重症例では、呼吸困難、チアノーゼ、意識障害がみられ、重篤になります。緊急に治療を開始する必要があります。
 肺炎が重症化しやすい要素としては、60歳以上の高齢者、男性、喫煙者、低栄養状態(アルブミン低下)などが考えられます。
肺炎球菌の特徴的な症状
   肺炎球菌性肺炎では、悪寒、発熱、頭痛、咳、痰を5大症候として、そのほかに頭痛、全身倦怠感、食欲不振などの全身症状がみられます。
ブドウ球菌の特徴的な症状
   原因となる細菌がブドウ球菌のように毒性の強い細菌の場合、肺炎の部分が溶けて空洞が出現する肺化膿症、肋膜に水が貯留する胸膜炎、それが膿に変化する膿胸もあります。
 これらの合併症は治療が難しくなるため、注意が必要です。
気管支炎に似た症状
   咳と痰は、気管支炎にも共通する症状です。しかし、気管支炎に比べて、高い発熱、胸痛、呼吸困難などは、肺炎を疑わせる症状です。
 こうした症状がみられる場合、できるだけ早く医療機関へ受診するようにしてください。

細菌性肺炎の診断は?
エックス線検査
  イメージ画像 必ず行われる検査は、胸部エックス線検査です。
 エックス線映像に影がある場合、微生物の感染による肺炎、肺ガン、薬剤に対するアレルギー反応など、症状や診断所見、喀痰(かくたん)の検査などから診断します。
細菌の特定
   感染症に起因する肺炎の場合、一般的な細菌による感染症なのか、マイコプラズマ、クラミジア、ウイルスなど、一般的な細菌以外の肺炎なのか、原因微生物を特定するため、細菌学的検査を行います。
 細菌学的検査は、喀痰の培養、血清中の抗体価の測定で行われます。
 もっとも簡単な原因細菌の推定法は、喀痰の塗沫染色による観察で、グラム染色と呼ばれる方法が用いられます。膿性の良質な喀痰が得られた場合、細菌性肺炎ではほとんどの原因細菌がグラム染色で推定できます。
迅速診断
   頻度の高い肺炎球菌、重症化するレジオネラ菌に対しては、尿中の細菌の抗原を検査する、簡便な迅速診断法が普及しています。
 尿の中の細菌の抗原を検出する、簡便で迅速な検査法です。特に重症肺炎の場合、尿中抗原の検出は有用です。
 インフルエンザウイルスについても、迅速診断キットが広く活用されており、上気道分泌物を用いて、簡単に診断できるようになっています。
問診も重要
   原因細菌を推定するには、問診も大切になります。
 温泉旅行に行ったことがある場合、レジオネラ肺炎が疑われます。
 基礎疾患に関しては、糖尿病や副腎皮質ステロイド薬の投与など、感染しやすい免疫状態の変化も重要な情報になります。
 問診と同時に、胸部の打診や聴診も行います。打診では空気が少ないため鈍い打診音となり、聴診では分泌物などのために呼吸音の減少や雑音が聞こえます。
区別すべき病気
   細菌性肺炎と区別するべきもっとも重要な病気として、結核があります。
 エックス線検査で結核が疑われた場合、必ず喀痰の結核菌の検査を行います。
 その他、肺真菌症、重喫煙者などでは肺ガンに合併して気管支が閉塞した結果、二次的に肺炎を発症する閉塞性肺炎との区別も大切です。
検査結果から抗菌薬を選択
   さまざまな検査結果から、それぞれの微生物に合った抗菌薬が選択されます。
 治療薬の選択には、肺炎の重傷度も考慮しなくてはなりません。
 肺炎の重症度は、日本呼吸器学会のガイドラインにも基づいて、年齢、脱水の有無、呼吸困難、意識障害、血圧などで判断します。
 検査が可能であれば、白血球数、炎症の強さを示すCRPの増加の程度、腎臓や肝臓の障害の程度なども参考に、重症度を診断します。
市中肺炎の重症度分類数
男性70歳以上、女性75歳以上
脱水あり、またはBUN21mg/dl以下
動脈血酸素飽和度90%以下
意識障害
血圧収縮期90mmHg以下
該当項目数
┏━ ━┳━ ━┳━ ━┓
0個
軽症
外来治療
1個〜2個
中等症
外来または入院
  3個
重症
入院治療
4個〜5個
集中治療室
ICU入院

細菌性肺炎の治療法は?
外来治療と入院治療
  イメージ画像 検査結果から、外来治療を行うか、入院治療を行うか、決定します。
 軽症で通院可能なら、経口薬の投与で治療します。中等症以上で入院が必要な場合、注射による治療が選択されます。
 入院治療でも、重症度が高度な場合、集中治療室への入院が行われます。
 基礎疾患があったり、高齢者の場合、軽症でも入院治療を行い、軽快する傾向を確認した上で、外来治療に切り替えるのが安全だと考えられています。体力の弱っている高齢者では、口から薬を飲むことができず、食欲不振が増して誤嚥性肺炎を併発し、症状を悪化させることがあるので、即効性があり確実な抗生物質の血管注射投与が行われます。
 外来治療か入院治療かの選択は、重症度による診断のみでなく、家庭での看護の状況、基礎疾患にともなう重症化の可能性も考慮し、医師が判断します。
治療薬の選択
   原因となっている細菌に合わせた、適切な抗菌薬を投与することが治療の基本です。
 肺炎球菌、黄色ブドウ球菌などのグラム陽性菌、インフルエンザ菌、クレブシエラなどのグラム陰性菌では、使用する抗菌薬の種類が異なります。
 治療を行う病院や地域によって、同じ種類の細菌でも、薬剤に対する感受性が異なることも考慮に入れる必要があります。また、抗菌薬の投与回数、投与量、併用薬に対する注意なども考慮する必要があります。
 抗菌薬に耐性のある細菌の区別が重要で、感染症治療の大きなポイントとなっています。効果が不十分な場合、抗菌薬の選択、投与方法を再検討し、肺炎以外の疾患の可能性も念頭におく必要があります。
耐性菌の存在
   細菌性肺炎でもっとも頻度の高い肺炎球菌には、ペニシリン系の抗菌薬が効果的でした。しかし最近では、ペニシリン耐性肺炎球菌という耐性菌が増加し、抗菌薬による治療を難しくしています。
 重症の人、基礎疾患のある人、高齢者では、経口薬ではニューキノロン系の抗菌薬が使用されます。注射薬では、カルバペネム系の抗菌薬が使用されます。
 重症度、基礎疾患、耐性菌の頻度などを総合的に判断し、抗菌薬の投与法や種類が決定されます。
重症例では
   重症の肺炎では、酸素投与、場合によっては人工呼吸管理が必要になります。
口腔内を綺麗に
   誤嚥性肺炎を起こした場合、口腔内の清浄が保たれていないことが大きな原因となっています。
 歯磨きを敢行し、歯肉の化膿性病巣などを歯科で治療してもらう必要があります。
安静が必要
   肺には血管が多数あるため、肺炎になると細菌が血行に乗って全身に散布されてしまいます。そのため、安静が大切です。3週間〜4週間は、安静が必要です。咳や痰の消失、解熱だけでは、治癒したとは言い切れません。
 また、保温と、十分な栄養補給も重要です。全身への影響が強く出ていて飲食が不十分な場合、点滴を行います。
生命を脅かすレジオネラ肺炎
   進行が急激な重症肺炎の場合、レジオネラ肺炎が疑われます。
 レジオネラ肺炎の場合、通常は良く利用されるセフェム系などの抗菌薬では効果が得られず、マクロライド系、ニューキノロン系、リファンピシンといった抗菌薬を優先的に選択し、迅速に投与する必要があります。
 レジオネラ肺炎の場合、疑うか、疑わないかで、生死が分かれると言っても過言ではありません。
 肺炎になる前の1週間〜2週間の間、温泉旅行に行ったことのある人、透析中などで免疫に影響する治療を受けている人では、注意が必要です。

細菌性肺炎かなと思ったら?
呼吸器科へ
  イメージ画像 咳と痰だけでは、肺炎と気管支炎の区別をすることはできません。発熱が高く、胸痛、呼吸困難などがあれば、肺炎の疑いがあるため、すぐに医療機関を受診するようにしてください。できれば呼吸器専門医のいる病院を受診するようにしてください。
 医療機関では胸部エックス線検査を行い、重症度に応じて、入院の是非、専門病院への転送などを判断します。
緊急を要することも
   意識障害、呼吸困難、チアノーゼ、血圧の低下などが認められた場合、重症肺炎の徴候があります。
 重症肺炎では進行が早く、治療が間に合わないこともあり得るので、緊急に医療機関を受診するようにしてください。
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