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心筋梗塞


心筋梗塞の概要は?

おもな症状

 

狭心症と似ていますが、はるかに強く、恐怖と不安をともなう激しい胸痛と胸部絞扼感(きょうぶこうやくかん)が急激に起こり、数10分〜数時間継続する
冷や汗
吐き気

似ている病気

 

狭心症
解離性大動脈瘤(かいりせいだいどうみゃくりゅう)
自然気胸(しぜんききょう)
急性心膜炎(きゅうせいしんまくえん)
肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)

起こりやすい合併症

 

不整脈(ふせいみゃく)
急性心不全(きゅうせいしんふぜん)
ショック


心筋梗塞ってどんな病気?

心筋梗塞とは?

 

心臓 狭心症(きょうしんしょう)、心筋梗塞(しんきんこうそく)などの虚血性疾患(きょけつせいしっかん)は、心臓を養う冠動脈の動脈硬化(どうみゃくこうか)によって血管の内腔が狭くなり、血液の流れが制限されて起こります。
 冠動脈が塞がると、約40分後から心内膜側の心筋は壊死に陥ります。
 これが「心筋梗塞」です。

貫璧性梗塞とは?

 

 壊死は次第に心外膜側へ波状に広がり、6時間〜24時間後には心筋壊死が心内膜側から、心外膜側までに及びます。
 これが「貫璧性梗塞(かんぺきせいこうそく)」です。

狭心症と心不全

 

 冠動脈の動脈硬化に基づく病気である狭心症では、心筋の壊死はなく、心臓本来の働きであるポンプ機能は正常に保たれています。それに対して心筋梗塞では、心筋が壊死に陥ってポンプ機能が損なわれており、壊死が広汎に及べば急性心不全やショックを合併することがあります。

急性心不全の前兆

 

 近年の医学の進歩によって、急性心筋梗塞の死亡率は下がってきています。ですが、現在でも5%〜10%の患者さんが死亡しており、侮ることはできません。
 急性心筋梗塞の半数には、前駆症状として狭心症があります。残りの半数には、まったく何の前触れもなしに突然発症するため、予知が難しい病気です。

陳旧性心筋梗塞(ちんきゅうせいしんきんこうそく)

 

 心筋梗塞は発症からの時間の経過によって、治療法、重症度が異なってきます。発症2週間以内を「急性心筋梗塞」と呼びます。1ヶ月以上経過したものは、「陳旧性心筋梗塞」と呼びます。
 陳旧性心筋梗塞の重症度は、心筋壊死の大きさの心機能と、狭窄の病変がある冠動脈の数である罹患枝数によって規定されます。この段階になると、心筋の保護と動脈硬化の進展を抑えて次の心筋梗塞の発症を防止することが重要になります。
 動物性脂肪を控えたり、禁煙、生活習慣の改善が大きな意味を持ちます。


心筋梗塞の原因は?

従来の説

 

血液 従来では、冠動脈の粥腫(じゅくしゅ)は、長年に渡って直線的に増大し、安定的な狭心症の状態から、狭窄度の増大とともに不安定狭心症へと進み、さらに内腔が完全に塞がることによって急性心筋梗塞を発症すると考えられてきました。
 粥腫は、コレステロールを中心とした脂質成分で、線維などの細胞外マトリックス、平滑筋細胞、マクロファージなどの細胞成分からなります。

急性冠症候群

 

 近年では不安定狭心症や急性心筋梗塞は、冠動脈壁の粥腫の崩壊と、それに引き続いて起こる血栓の形成のため、冠血流が急激に減少するという共通の病態にもとづいて発症するものと考えられるようになりました。これらをまとめて、「急性冠症候群」と呼ばれています。
 しかし、すべてがこれら粥腫の崩壊にもとづくものではありません。狭窄度が少しずつ進行したもの、冠動脈の血管平滑筋の過剰な収縮によるものも少なくありません。

動脈硬化

 

 粥腫は動脈硬化によって形成されます。
 動脈硬化は動脈が弾力性を失ってもろくなった状態で、年齢とともに進行していきますが、人種差、体質、外的要因などによって進行度に違いがあります。
 冠動脈の動脈硬化を進行させる因子を冠危険因子と呼ばれ、高コレステロール血症、高血圧、喫煙糖尿病肥満痛風、中性脂肪、運動不足、精神的ストレスなどがあげられます。


心筋梗塞の症状は?

激しい胸痛

 

症状 急性心筋梗塞の多くの場合は、胸部の激痛、締めつけられるような感じの絞扼感、圧迫感としてあらわれます。
 胸痛は30分以上続き、冷や汗をともなうことも多く、重症ではショックをしめします。胸痛の部位は、前胸部、胸骨下が多く、下顎(かがく)、頸部(けいぶ)、左上腕、心窩部(しんかぶ)に放散してあらわれることもあります。
 随伴症状として、呼吸困難、意識障害、吐き気、冷や汗をともなう場合は、重症のことが多いとされています。

高齢者の場合

 

 高齢者では、特徴的な胸痛ではなく、息切れ、吐き気などの消化器症状で発症することも少なくありません。
 糖尿病の患者さんや、高齢者では、無痛性のこともあり、急性心筋梗塞の約15%は無痛性心筋梗塞になります。

狭心症の患者さん

 

 狭心症の患者さんでは、症状の程度が普段よりも強くなったり、回数が頻繁になったり、軽い動作で誘発されるようになった場合には、不安定狭心症や心筋梗塞に移行する可能性があります。
 すぐに専門医の受診を受けるようにしましょう。


心筋梗塞の診断は?

心電図

 

心電図 急性心筋梗塞は特徴的な強い持続性の胸痛と、心電図の所見、血清酵素の上昇から診断されます。
 心電図検査は簡単ですが、急性心筋梗塞の診断には極めて有効な検査です。

心電図での検査

 

 発症直後はT波の増高だけしか認められず、専門医でないと見逃してしまうこともあります。2時間〜3時間後には、特徴的なST上昇が認められます。
 心電図のST上昇を示す誘導箇所から、心筋梗塞の場所、どの冠動脈が塞がっているかを知ることができます。
 さらに時間が経過すると、R波が減高し、Q波の出現が認められるようになります。
 しかし、心臓の後ろ側の心筋梗塞など、一部の症例では、急性期でもST上昇が認められず、ST低下として表現されることもあるため、診断が難しくなることもあります。

心エコー検査

 

 補助的な検査として、心エコー検査で心筋の壁運動を観察して診断します。
 胸痛の原因が心筋梗塞なのか、大動脈解離などの他の病気なのか、鑑別診断にも心エコー検査は有効です。
 慢性期の陳旧心筋梗塞では、梗塞の部位に一致した誘導で異常Q波と、陰性T波が認められます。


心筋梗塞の血液・生化学検査は?

心筋逸脱酵素の上昇

 

検査 心筋梗塞の急性期には、壊死に陥った心筋から心筋逸脱酵素(CK、CK-MB、GOT、LDHなど)が放出され、血液中で上昇します。
 近年ではベッドサイドで簡単に測定可能なトロポニン、心臓型脂肪酸結合蛋白の測定が有効です。

時間的なズレ

 

 どの心筋逸脱酵素も、心筋梗塞発症から血液中で上昇を始めるまでには時間的なズレがあります。もっとも早く上昇するCK、トロポニンでも血液中で上昇してくるのは、発症から3時間後くらいからです。
 発症直後であれば、心筋逸脱酵素が上昇していなくても、急性心筋梗塞を否定することはできません。必要があれば時間を追って繰り返し測定しなければなりません。

長所と短所

 

 発症早期には、ミオグロビンの測定が有効です。しかし、心筋特異性が低いのが欠点です。
 GOTは骨格筋にも多く含まれているので、運動後や筋肉注射後にも上昇します。この見分けをするためには、心筋に特異性の高いCK-MBの測定が有効となります。


心筋梗塞の治療法は?

早期治療が大切

 

手術 急性心筋梗塞の治療は一般的治療と、特殊治療とに分類されます。
 急性心筋梗塞は梗塞の範囲が広いほど、予後が不良になるので、できるだけすみやかに詰まった冠動脈を再開通させる再灌流療法(さいかんりゅうりょうほう)が重要となります。

再灌流療法

 

 再灌流療法には、静脈か冠動脈から血栓を溶解させる組織プラスミノーゲンアクチベータと呼ばれる薬物を注射する血栓溶解療法(けっせんようかいりょうほう)があります。
 また、カテーテル検査に引き続いて、バルーンやステントを留置する冠動脈インターベンションという治療法がありまうす。

冠動脈インターベンション治療

 

 血栓溶解療法は、出血性合併症の問題があり、血栓が溶けても高度の狭窄病変が残ることが多く、冠動脈インターベンション治療が多く行なわれています。
 冠動脈を再開通させるには、発症からの時間も重要で、簡便にできる血栓溶解静注療法ですぐに再灌流を得て、引き続きインターベンション治療によって確実に開大させる併用療法も有効です。
 発症後6時間以内であれば、再灌流療法により心筋壊死の範囲を狭くすることが可能です。一般的には12時間以内がインターベンション治療の適応とされています。

一般的治療

 

 一般的治療としては、数日間の安静・絶食、鎮痛薬、安定剤の投与、酸素吸入が必要です。
 アスピリンは急性期から投与し、継続的に心電図を監視して重症の心室性不整脈が現われるのに対応できるようにします。
 心筋梗塞後にはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE)、β遮断薬も死亡率を減少させるとされています。しかし日本人では、血管痙攣によるものが多く、カルシウム拮抗薬も有効です。

生活習慣

 

 退院前には生活習慣を正し、必要があればスタチン製剤などのコレステロール低下薬を投与し、長期予後の改善を図る必要もあります。


冠動脈バルーン拡張術とステント治療

冠動脈バルーン拡張術

 

血管 カテーテルを利用して冠動脈の狭くなった病変を広げたり、削ったりする治療法を経皮的冠動脈形成術(PCI)と呼びます。
 もっとも一般的なのが、先端にバルーンの付いたカテーテルによって、狭くなった病変を広げる冠動脈バルーン拡張術(PTCA)です。
 PTCAによって冠動脈バイパス術に比べて、体への負担が少なく、狭心症状を改善することができるようになりました。しかし、急性期の冠動脈閉塞による心筋梗塞などの合併症が少なくないこと、拡張後3ヶ月〜4ヶ月で血管が拡張前の状態に戻ってしまう再狭窄が約40%と高確率で生じるという問題点がありました。

ステント

 

 ステントはバルーンで拡張した狭窄部位に留置するコイル状か円筒形のメッシュ状の金属製支持物です。冠動脈の内側から内膜を壁に押し付けるので、バルーン拡張後に生じる冠動脈解離の修復が可能で、ステントの導入でPTCAの急性期の合併症は激減しました。
 ステントの導入により、大きなバルーンで大きく拡大することができるようになり、より大きな内腔を得られるようになりました。
 バルーンによる拡張後、血管弾性による縮みを防ぎ、いったん拡張した血管が遠隔期に縮小する血管リモデリングという現象を防ぐことによって、6ヵ月後の再狭窄の頻度がバルーンに比べて半減することが判明しました。現在ではPCIの約75%に使用されています。

ステントの短所

 

 ステントを使用しても血管の障害に引き続いて生じる内膜の増殖は抑えることができません。そのため、再狭窄が完全になくなることはありません。血管経が2.5mm以下の細い血管、びまん性の長い病変では再狭窄率が高く、ステント内に新生内膜がびまん性に増殖するステント内再狭窄という新たな問題が生じます。
 近年では、ラパマイシンなどの免疫抑制薬をコーティングした薬物溶出性ステントの有効性が報告されています。しかし、長期に渡る安全性の確認、高額な治療費をどのようにするかという問題もあります。


心筋梗塞かなと思ったら?

救急車を

 

救急車 重症な病気なので、強い胸痛があればすぐに救急車を呼び、専門医の診察を受けるようにしましょう。
 また、普段から病気にならないように、生活習慣の改善に努めることが何よりも重要となります。

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