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 向精神薬中毒
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向精神薬とは?
脳に作用する薬
  イメージ画像 脳など中枢神経に作用して脳の働きに影響する薬を総称して、向精神薬と呼びます。おもに精神科、神経科、心療内科などで処方されます。
向精神薬の分類
   向精神薬にはいくつかのグループがあります。大別すると、効き目が強く精神疾患に用いられる抗精神病薬、うつ病に用いられる抗うつ薬、抗不安薬、気分安定薬、睡眠薬などに分類できます。

抗精神病薬中毒とは?
抗精神病薬とは?
  イメージ画像 幻覚や妄想といった知覚や思考の異常を抑え、病的な興奮状態を鎮静させる作用があります。
 おもに統合失調症、躁病、妄想などの精神病症状をともなううつ病、高齢者や手術後に起こる意識混濁をともなったある種の興奮状態・せん妄などに用います。障害の強い不安、焦燥に用いるケースもあります。
 脳内のドーパミンで伝達される神経の働きを遮断することで作用すると考えられています。
一般的な副作用
   一般に精神を鎮静化させる薬です。眠気を覚え、判断が鈍くなり、周囲に無関心になるため、自動車の運転や危険な作業は控える必要があります。
 血管、呼吸、消化器など、すべての体の自律神経を抑えるため、起立性低血圧、不整脈、呼吸抑制、口の渇き、鼻詰まり、光が眩しい、尿が出せなくなる閉尿(へいにょう)、嘔吐、腸閉塞・イレウスなどもみられます。
重い副作用
   筋の動きや運動を調節する錐体外路系(すいたいがいろけい)に作用して、パーキンソン症候群を起こします。副作用止めの薬を併用しながら使用します。
 肝臓や骨髄にも作用して、黄疸や白血球減少症も起こします。
悪性症候群
   もっとも有名な抗精神病薬中毒に、悪性症候群があります。急激な高熱、筋肉が硬くなる筋強剛(きんきょうごう)、頻脈(ひんみゃく)、発汗、血圧上昇、頻呼吸、意識障害、無言、無動などがみられ、危険な状態になり、死亡することもあります。
 ただちに服薬を中止し、医師の診察を受けるようにしてください。

抗うつ薬中毒とは?
抗うつ薬とは?
  イメージ画像 憂鬱で落ち込んだ気持ちを持ち上げ、意欲ややる気を起こさせる作用があります。
 おもにうつ病、躁うつ病、気分変調症などの感情障害に用いられますが、強迫性障害不安障害過食症などにも有効とされています。効果が現れるまでに、最低でも2週間以上かかる、じっくりと効くタイプの薬です。
 ノルアドレナリンやセロトニンで伝達される神経の両方、またはいずれか1種類の神経末端での伝達物質の取り込みを阻害することで効果をもつと考えられています。
致死中毒数
   長期間服用することが多いため、家庭内に大量の薬が貯まり、自殺目的で服用したり、子供がお菓子と間違えて食べてしまったりします。
 うつ病の治療には、イミプラミン、アンセリンなどの三環系抗うつ薬・四環系抗うつ薬や、パロキセチンなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬が使用されます。
 通常量服用の100万人あたりの致死中毒数は、三環系抗うつ薬・四環系抗うつ薬で10人〜30人、選択的セロトニン再取り込み阻害薬で約10人とされています。
さまざまな中毒症状
   中毒症状としては、不整脈、心停止、低血圧、頻脈、心臓の伝導障害などの循環器系の症状。せん妄、精神状態の悪化、焦り、発汗、筋の協調障害。昏睡、痙攣(けいれん)などの中枢神経症状があります。
 ほかにも、筋肉がピクピクと動くミオクローヌス、震えがみられる、筋障害、腎不全、妄想(もうそう)、高血圧、便秘、緑内障、呼吸不全、胃腸の蠕動抑制、瞳孔拡大、嘔吐、体温低下、代謝性アシドーシスを起こすこともあります。
抗うつ薬中毒の治療法
   胃内に長時間、薬がとどまっているため、事故から12時間たっていても、胃洗浄を行います。
 心臓の伝導障害があれば、フェニトインを注射します。それでも心室性不整脈が残れば、リドカインなどを注射します。痙攣が起これば、ジアゼパムを注射します。
リチウム剤中毒
   躁状態の治療に使用されるリチウム剤でも、嘔吐、下痢、意識障害、痙攣、尿が著しく少なくなる乏尿がみられます。
 治療量と中毒量の幅が狭いので、ときに致命的な場合があります。

睡眠薬中毒とは?
睡眠薬とは?
  イメージ画像 不眠症のために用いる薬ですが、精神疾患の多くに不眠をともなう場合が多いので広く用いられています。
 ほとんどがベンゾアゼピン系睡眠薬で、催眠作用の強い薬物を睡眠薬として使用しているだけです。抗不安薬と構造は似ており、抗不安薬としても使用され、安全性も高いものが主流になっています。代表的な製剤に、エスタゾラム、フルニトラゼパム、トリアゾラムなどがあります。
安全性の高いベンゾジアゼピン系
   以前はバルビツール系の薬が多く使用され、自殺などにも用いられてきました。しかし最近ではベンゾジアゼピン系の薬が使用されるようになり、高い安全性と、自然に近い睡眠作用が得られるようになりました。
 安全性が高まったとはいえ、大量摂取すると中毒を起こしてしまいます。
 中毒の大部分は、自殺目的によるものです。
 主症状は、意識障害、血圧低下、呼吸抑制です。
バルビツール酸中毒
   大脳皮質や脳幹など中枢神経の働きを抑制して、眠りに導く薬です。強い副作用があるため、睡眠薬としては使われなくなっていますが、抗てんかん薬、自律神経作用薬、強力精神安定薬の中にバルビツール酸を含むものがあって、これによる中毒が起こることがあります。
 血圧低下、ショック、呼吸数の減少、昏睡、体温低下がおもな症状です。手、臀部、膝の内側、足首の外側に水ぶくれができることがあります。
 バルビツール酸は胃腸の蠕動運動を抑えるので、長時間、胃の中にとどまっています。このため事故が起こってから24時間くらいたっても、初期治療の胃洗浄を行います。胃洗浄が終了したら、吸着剤の活性炭と下剤を胃の中に入れ、再び胃洗浄を行い、これを繰り返します。
 バルビツール酸の種類によっては、強制利尿が行われることがあります。
 重症のケースや、腎障害をともなう場合は、血液浄化が必要になります。
 長期間服用することで耐性ができてしまい、以前と同じ量では効かなくなるので徐々に服用量が増え、やめられなく依存症になります。これを慢性中毒と呼びます。言葉が不明瞭になり、上手く歩けなくなります。服用を中止すると不眠のほか、精神状態が不安定になり、震え、立ちくらみが現れ、数日後には痙攣、異常な精神状態がみられるようになります。
ベンゾジアゼピン中毒
   強い眠気の傾眠(けいみん)、構語障害(こうごしょうがい)、体が思うように動かない失調、物が二重に見える複視、知覚障害などの症状が起こります。血圧低下、呼吸数の減少、呼吸麻痺が起こることもあります。
 飲んで30分以内であれば、吐かせます。飲んで2時間以内であれば、吸着剤の活性炭や下剤の使用、ベンゾジアゼピンの拮抗薬であるフルマゼニル(アネキセート)の注射も行われます。
 誤嚥防止のための気管内挿管、呼吸を補助する酸素吸入などの保存的治療も必要です。
ブロムワレリル尿素中毒
   中毒を起こしやすいため睡眠薬として使用されることはありませんが、一般薬の鎮静薬の中にこの成分を含むものがあり、中毒事故が起こります。
 頭痛、無気力、舌のもつれ、記憶の減退、めまい、ふらつき、運動失調、幻覚、錯乱が起こり、重症になると昏睡に陥ります。
 胃壁が刺激されるため、吐き気・嘔吐が起こり、口臭が強くなります。顔ににきびのような発疹ができ、全身に広がることもあります。紅斑(こうはん)、結節(けっせつ)、膿疱(のうほう)、天疱瘡(てんぽうそう)のような水疱が出ることもあります。結節は梅毒の硬性下疳と間違えられることがあります。
 嘔吐させ、胃洗浄を行い、吸着剤の活性炭と下剤の使用、強制利尿で治療を行います。
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