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男性のうつ病(鬱病・欝病)


うつ病の自殺を防ぐために?

自殺者の推移

 

イメージ画像 2002年7月25日の朝日新聞の報道によれば、2001年の自殺者は3万1042人だそうです。神戸新聞の報道によれば、2002年度の自殺者は3万1754人日本だそうです。自殺者は5年連続3万人を超え、これは年間交通事故による死亡者の3.5倍に上っています。
 医師の死亡診断書に遺族の願いで自殺と記入しないケースも多いため、実際にはもっとたくさんの方が自殺していると思われます。
 性別で見ると男性が7割、女性が3割、年代別では50代〜60代が6割を占め中高年層の自殺割合が多いようです。この背景には昨今の不況に伴う職場や家庭内での深刻な事情のあると思われます。

うつと自殺企図の相関関係


 このような事情は現在でも変わらないと思われますが、人が自殺する背後に自らの人生に対する深い絶望感や哀しみのあることは、どなたでも頷けるところでしょう。この自殺の衝動(自殺企図または念慮といいます)の裏側には、まぎれもなく『うつ』の感情が潜んでいます。
 外国では、自殺者の50%〜70%がうつ病だと報告されています。

治りかけが危険

 

 うつ病は、よく『こころの風邪』と言われます。この『風邪』は、鼻風邪程度の軽症の場合もありますが、長く放置したままだと『肺炎』のように『命取り』になりかねない重症にまで進行していることもあります。しかも、うつ病の場合、自殺の衝動はうつ状態の進行中より、どちらかというと『治りかかった段階』で起こることが多いことが指摘されているのです。
 多くの自殺の衝動は、すべてとは言えないまでも、『うつ』に根ざす病的な心理状態から生まれていると言われています。働き盛りの方にそんな衝動的な気持ち、いわば『魔がさす一瞬』が生じるのを避けるためにもっとも大切なことは、『日常的なこころの健康管理』です。
 まず自分のこころを偽らず謙虚に、うつ度をチェックしてみてください。『うつ病の概要うつ病の概要』の一番下にあります。


一度、医師の診察を受けてください

自己診断の結果はどうでしたか?

 

イメージ画像 うつ病のチェックリストから、「自分もうつ病かな?」と『自己診断』された人のために、もう一度、うつ病の徴候を整理してみます。ポイントは、いずれも「症状が2週間以上続いている」ような場合です。以下の項目に該当する方は、一度専門医の診察を受けることをお勧めいたします。


気力の減退

 

 すべてのことに対してやることが億劫になる、食欲の低下、不眠または眠りすぎ、仕事に対する意欲の低下など

何事にも喜びや感動を感じない

 

 仕事や趣味に興味・関心がもてず熱中できない、引きこもりがち、性的な意欲や関心の低下など

自分を責める

 

 過去の些細な出来ごとに悩む、自分は役に立たない存在と思うなど

理由もなく疲れやすくなった

   

 無気力になる、体が重く感じられるなど


一時的なうつ状態とうつ病の違いは?

うつ病は自力では回復不可能なほど精神力が衰えている

 

イメージ画像 「うつ状態=軽い気分の落ち込み」と考えれば、『うつ』は誰にでも起こる日常的な感情の変化です。ここから考えると「うつ病=気分障害の病気」だということになります。しかし、『うつ』と『うつ病』は決して同じではありません。
 『うつ』とは「単純な気分の落ち込み(精神的なエネルギーの低下)現象」を意味する言葉です。これに対して、『うつ病』とは「うつ状態が長く続き、もはや自力では対処できない段階にまで進み、治療が必要な状態」のことです。
 この「うつ病=自力では回復不可能なほど精神力が衰えた状態」がポイントです。しかし、この状態は「医学的な治療によって改善が可能」です。しかも、『うつ病』は「早く診察を受け、適切な治療を受けるほど治りも早い」病気なのです。


一時的なうつ状態とうつ病の違いは?

性格的な側面も大きいうつ病の要因

 

イメージ画像 現在までのところ、「これがうつ病の原因だ」という確かな決め手はまだありません。
 確実にわかっているのは、うつ病に陥りやすい『きっかけ』の特徴と、うつ病になったとき脳内ではどんな変化が生じているのかというメカニズムだけです。
 うつ病に陥りやすいきっかけには、多くの心理的・社会的要因があります。しかし、それだけではなく、少なからずうつ病患者さんの性格的なものも影響しています。

 

うつ病になりやすい人その1

   

 何事にも『几帳面』、『仕事に手抜きができない』、『責任感が強い』、『誠実』な性格です。また、『対人的な配慮』や職場などでの『秩序を守ること』を優先する性格でもあります。
 このような性格は、これまでの日本では『美徳』とされ、また『理想』や『エリート』の条件とされていた人間像でした。昨今の急激な社会環境や価値観の変化にともない、これまで自ら信じていた価値意識にまで変革を迫られる社会状況が、現在働き盛りの人たちでうつ病患者さんを急増させている要因の1つであることは、不幸な事実と思われます。

 

うつ病になりやすい人その2

   

 【うつ病になりやすい人その2】のような性格の持ち主の中には、ときとして他人との対応や行動などに『無口』で『融通が利かない』、『ガンコ』で『一徹』な人たちがいます。いわば、「自分の感情を、うまく言葉で表現することができない状態(制約された状態)」にあって、「他人とのスムーズなコミュニケーションが苦手」なタイプです。このような性格の持ち主のことを、心身医学の専門家たちは『アレキシサイミア』(失感情言語化症)と呼んでいるそうです。
 アレキシサイミアは以下のような心理的特徴を持つとされています。

   

想像力が乏しく、心の葛藤を言葉にできない

   

物事を細部にわたって事実のみを中心に(いつ、どこで、誰が、なぜ、なにをしたなど)機械的に説明する

   

感情の言語表現が不得意で、楽しい人間関係が築けない

   

 『超真面目人間』ともいうべきアレキシサイミア・タイプの人たちは『心身症』になりやすいといわれていますが、『うつ病予備軍』になりやすいとも言われています。
 また、うつ病だけでなく『薬物嗜癖(病的なクスリ好き)』、『アルコール依存症』、『科学万能信奉』など、ストレス社会に生きる私たちが陥りがちな『ワナ』にはまりやすい性格の持ち主でもあります。

 

うつ病になりやすい人その3

   

 最後に、『A型行動パターン』と呼ばれるタイプです。血液型のA型とは無関係です。
 A型行動パターンとは、もともと『虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)』の発病に関係の深い性格傾向を指す言葉でした。A型とはアクティブ(攻撃型)のことです。すなわち、「気性が激しく」、「競争心が強い」タイプで、「いつも時間に追われ」、「イライラ感が強く」、「物事を達成しようとする意欲が人一倍強い」人たちのことを指します。


真面目人間を襲う仮面うつ病とは?

心の症状がマスクされた状態

 

イメージ画像 うつ病は『心の病気』として発症するだけでなく、むしろ、『うつ病』と診断されていない段階では、『体の病気』として現れる症状が多いという特徴があります。色々な体の異常や症状が、あたかも『仮面』を被って出る(心の症状がマスクされている)ところから、このような病態のことを『仮面うつ病』といわれています。
 これまで、うつ病になりやすい人のタイプを詳しく説明した中でも、特に真面目な人の場合、「身体症状=身体病」と自己診断してしまい、自分がうつ病にかかっているという自覚がなく、生来の科学的関心の強さも加わり、医師の説明に納得できないまま「ドクター・ショッピング」を繰り返す人たちも少なくないのです。
 ただし、注意が必要なのは、ある特定の『体の病気』が『うつ病』の引き金になる可能性も少なくありません。しかしここでは、「うつ病は、体の異常として現れる」ことが多いことを理解してください。
 詳しくは『仮面うつ病仮面うつ病』のページを参照してください。


仮面うつ病の症状は?

仮面うつ病の症状

 

 仮面うつ病が疑える異常や症状は実に多様です。
 うつ病が原因で生じるこのような症状は、原因が身体機能や臓器自体の病変によるものではないため、薬などによる治療はあまり効果がありません。

 

痛み

   

 もっとも自覚しやすいのは『痛み』です。『頭痛』、『頭重感』、『胃痛』、『腰痛』、『関節痛』など、この『痛み』にはさまざまなものがあります。
 頭痛の場合、うつ病特有の頭痛とは「頭が重く締め付けられるような痛み」で、しばしば「鉢を被ったような重さ」と表現されます。

 

自律神経系の異常

   

 『痛み』に次いで多いのは『食欲不振』、『下痢』、『便秘』などの『胃腸症状』。『発汗』、『息苦しさ』、『動悸』、『口渇』などの『自律神経系の異常』などです。さらに『排尿障害』、『頻尿』などが生じることもあります。

 

睡眠障害・倦怠感

   

 うつ病が疑えるもう1つの特徴的な異常は『睡眠障害』です。睡眠障害のため『全身倦怠感』、『疲労感』が加わることも少なくありません。睡眠障害には『不眠』と『過眠』がありますが、うつ病で多いのは『不眠』です。
 不眠になったとき、「寝付きが悪い」あるいは「眠りが浅い」など、その異常は自分でもわかります。特に「夜中に目が覚めると、その状態が朝まで続く」状態(中途覚醒や早朝覚醒といいます)は、うつ病患者さんに多い症状です。このような不眠が続けば当然体調もおかしくなり、全身の疲労感や倦怠感に繋がっていきます。
 うつ病にともなう不眠は、単なる睡眠不足による過労ではなく、「十分な休養もできないほど心身が疲弊した体の悲鳴」だと捉えてください。なので、いくら本人が休養を取ろうと努力しても、この疲労感は解消しません。

 

その他

   

 『食欲不振』や『性欲減退』なども、同根にうつ病にもとづく異常です。


会社に行きたくないと思うようになったら?

出社拒否症

 

イメージ画像 勤めを持つ人たちの場合、普段から体調も悪く出勤時になって突然、頭痛や下痢、動悸などを感じ、通勤電車に乗ったものの症状がますます激しくなり、ついUターンしてしまう現象があります。いわゆる『出社拒否症』です。
 出社拒否を何度もくり返すような場合、本人も不安を感じて病院を訪れることが多いようです。ところが、原因が心の中にあるため、検査してもらっても「とくに異常はありません」と言われるだけで診察が終わってしまいます。このような出社拒否症に陥る人たちの中には、「何事にも完璧主義」がモットーで、その自負が自覚されないまま「本人にプレッシャーをかけている」人たちが多いようです。

出社拒否症

 

 このような人たちにみられる出社拒否症は、日常から自分に科している「義務感」や「責任感」の破綻が、身体症状として現れる病的な現象で、『仮面うつ病』の可能性があります。
 なお、似た病態に、通勤電車内などで突然がまんできない便意に襲われ、ついに下車を余儀なくされるようなときがあります。『過敏性腸症候群過敏性腸症候群』といいます。この病気は心身症の一種で、やはりストレスと関連があります。


うつ病とアルコールの関係は?

悪循環からアルコール依存症へ

 

イメージ画像 長く不眠が続いたり、気分が沈んだ時などには、つい「アルコールの力を借りてー」などと考えがちです。しかし、うつ病は「生きていく意欲そのものが低下した状態」なので、ほとんどの場合、お酒を飲んでもあまり美味しいと感じません。しかし、うつ病患者さんには飲む目的が睡眠や休息を得ることにあるため、ただひたすら量を増やす日々を重ねる結果となりがちです。
 このような悪循環から、うつ病患者さんの場合『アルコール依存症アルコール依存症』(いわゆるアル中)に陥る人が少なくありません。アルコール依存症では、飲まない間の震え、発汗、時にはけいれん発作などの身体症状を出しますが、人格の変化や幻覚などの精神症状も、ともなうようになります。

うつ病になるとアルコールでストレス発散はできない

 

 うつ病になった人の場合、アルコールはストレス発散の役目を果たしてはくれず、むしろ過度の飲酒が肝障害などの要因となったり、人格破壊や自殺企図にまでつながりかねず、「心身の危険状態への新たな一歩」となる可能性がきわめて高いことを理解してください。
 不眠を訴える方の中には、睡眠薬よりも少量の寝酒の方が体に害を与えなくて良いと考える人もいますが、アルコールは睡眠の質を悪化させ、かえって飲酒量が増し、肝臓などに負担をかけてしまうことを覚えておいてください。


検診データーとうつ病の関係は?

体の病気がうつ病の原因になることも

 

イメージ画像 どんな病気であれ、病気になったとき人は誰でも程度の差こそあれ『うつ状態』に陥ります。ところがその一方で、身体に生じた病気そのものが『うつ状態』をもたらす病気も少なくありません。
 たとえば、医師から突然『ガン』だと告げられたようなとき、ほとんどの人は『うつ状態』に陥りますが、とくに『膵ガン』の場合、うつ症状が強く出ることが報告されています。また、A型行動パターンの説明でも触れたように、狭心症などの心臓病、糖尿病、自律神経系と密接な関係のある内分泌疾患(甲状腺機能亢進症甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症・低下症など)、ウイルス性肝炎、エイズなどは、うつ状態を悪化させることが多いようです。

体調に異常を感じたら医師の診察を

 

 うつ病の診断時にはこのような身体病の有無を調べるため、さまざまな検査が行われますが、日常の検診データ(血液や尿などの生化学検査値)だけから、患者さん本人がうつ病だと疑えるものはほとんどありません。
 しかし、血圧や急激な体重変化、医師にとっては心電図にみられる異常など、体調の異常を示す所見は、うつ病の存在や進行を示す貴重なデータを提供してくれます。体調に異常を感じたときは、早めに職場の嘱託医である産業医や、掛かり付け医師に相談することを心掛けるようにしてください。


うつ病の治療法方は?

うつ病であると自覚を持ちましょう

 

イメージ画像 とても基本的なことですが、うつ病患者さんが「いま自分は、うつ病という『病気』になっているんだ」という病識を持つことです。
 現在では、原因不明の難病や、まだ治療法の確立していない病気を除けば、ほとんどの場合は有効な治療法があります。うつ病も同じです。うつ病は、『治る病気』なのです。

治療には時間がかかることを理解しましょう

 

 うつ病の場合、よほどの重症でない限り、治療は外来で行われます。そこで、ほとんどの医師は患者さんに対し、「1ヶ月〜3ヶ月ほど休暇を取り、自宅で静養しながら治療を始めましょう」と言います。しかし、真面目人間であればあるほど、職場などに迷惑のかかることを怖れて躊躇したり、ショックを覚えがちです。また、「外来で治療ができるなら、休まずに治療が受けられるのではないか」と、内心疑問を抱いたりします。
 しかし、うつ病になったほとんどの人の場合、「自分に求められている仕事上の正常な判断力や決定力が衰えている」状態にあると考えられます。まず休むこと、そして「一日も早く自分が正常な判断力を取り戻すことこそ、今求められている」ことだと意識を切り換えましょう。

不在中の仕事は会社にお任せ

 

 うつ病治療を受けることを決心したら、一日も早く職場の上司に相談をして、自分の病状を伝えることが大切です。職場での仕事の調整などはすべて会社に任せて、まず職場の存在そのものを「心から解放する」ことが必要です。
 長期休暇には、それなりの理由が必要です。しかし、医師に診断書(1ヶ月〜3ヶ月の病気休暇)を書いてもらえば、治療に必要な最低期間の休暇を取ることは可能です。その際、休暇中の賃金の保証がない場合は健康保健の「傷病手当金」の手続きを行うと良いでしょう。

緊急避難場所は入院です

 

 自営業など自宅での休養が取れないうつ病患者さんや、病態にあまり改善がみられないうつ病患者さんなどは、治療中に医師が入院による治療を勧めることがあります。特に自殺念慮が強く、実際に自殺未遂を起こしたようなときは、入院治療はとても重要です。また、自殺の怖れがなくても、家庭環境が治療を妨げていると判断されたような場合は、躊躇せず入院に踏み切ることが大事でしょう。
 うつ病患者さんにとって「入院は緊急避難の場」だと考えてください。


新しい抗うつ薬は?

さまざまな抗うつ薬

 

イメージ画像 うつ病の治療は、『薬物療法』(抗うつ薬の服用療法)、心理的にサポートする『心理的療法』、家庭や職場などの環境や人間関係の調整を目的とした『社会的療法』を加味しながら、その患者さんにもっとも適した治療が行われます。
 その中でも中心的存在は薬物療法です。薬物療法では、従来から使用されている三環系および四環系抗うつ薬とともに、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)とSNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)という『第三世代抗うつ薬』、『第四世代抗うつ薬』が登場しています。
 このように新しい世代の抗うつ薬といえども、まだ100%副作用を抑えきれないのが難点ですが、自分のうつの特徴にあった抗うつ薬を辛抱強く地道に指示どおり飲み続けることが、よい治療効果の得られる早道です。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

 

 SSRIは、うつ病が脳内のセロトニンとノルアドレナリンの欠乏によって起こるという考え方から、セロトニン(神経伝達物質)の受容体への取り込みを阻止して、うつ状態を改善させる薬剤です。この薬の特徴は、三環系・四環系抗うつ薬とほとんど同じ効果を持ちながら、従来の抗うつ薬では避けられない口渇、便秘、たちくらみや眼のかすみ、また緑内障の悪化などの副作用が緩和されたことです。
 このような利点から、SSRIはうつ病に対する薬物療法の主役として使用される機会が増加してきています。しかし、SSRIにも、眠気や過鎮静作用、頭痛、吐き気などの副作用が起きると言われています。

SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)

 

 一方、SNRIはセロトニンとノルアドレナリンの2つの物質に作用する薬剤です。うつ病に対する効果はSSRIとほぼ同程度とされています。

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