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むくみ 大量の蛋白尿 尿量減少
肝硬変
低蛋白血症(ていたんぱくけっしょう) 腹水
ネフローゼ症候群は、大量の蛋白尿が出て、それにともなって血液中の蛋白質が減少します。そのため、浮腫・むくみ、コレステロールなどの脂質の上昇などが現れる病気です。
ネフローゼ症候群には、さまざまな腎疾患が含まれていて、ひとつの疾患ではありません。 一次性ネフローゼ症候群・原発性ネフローゼ症候群は、原発性糸球体疾患によるネフローゼ症候群です。
二次性ネフローゼ症候群・続発性ネフローゼ症候群は、糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)、膠原病(こうげんびょう)、アミロイドーシスなどの全身疾患によるネフローゼ症候群です。
微小変化型ネフローゼ症候群は、15歳以下に多く発症するネフローゼ症候群です。 50歳以上になると、膜性腎症を中心とした他の組織型の頻度が増加します。
糸球体基底膜のおもにアルブミンからなる高分子蛋白の透過性亢進によって、高度な尿蛋白が認められます。このため、低蛋白血症になります。 浮腫・むくみの原因としては、大量の蛋白尿喪失による血漿膠質浸透圧(けっしょうこうしつしんとうあつ)の低下、循環血漿量の増加などが考えられています。
成人では膠原病などの全身疾患にともなって起こる二次性ネフローゼ症候群が多いのに対し、子供では腎臓に直接原因があって発症する一次性ネフローゼ症候群が90%を占めます。 大半は腎臓の組織にほとんど変化のない、微小変化型です。好発年齢は2歳〜6歳です。 頻回に再発する例が多いのですが、慢性腎不全に至るケースはありません。
顔や手足に浮腫・むくみが認められます。 ときに全身浮腫が著しくなり、胸や腹に水がたまる胸水・腹水になることもあります。 尿が出にくくなり、腎機能の障害、血圧の低下を認めることもあります。
ネフローゼ症候群の患者さんの血液は固まりやすい状態にあるので、腎静脈や下肢深部静脈に血栓性静脈炎を起こすことがあります。
ネフローゼ症候群の診断基準を満たせば、原因にかかわらずネフローゼ症候群と診断されます。
尿所見では、一般的に大量の蛋白尿が認められます、時に1日に20g以上になります。 そのほか、血尿は微小変化型では通常は認められません。他の疾患では、いろいろな程度の顕微鏡的血尿が認められます。卵円形脂肪体、脂肪変性した腎上皮細胞などが認められます。
血液検査では、総蛋白、アルブミンの低下、高コレステロール血症などが認められます。 腎機能は正常から、低下例まで、さまざまです。
尿中蛋白の状態を知る検査方法としては、尿蛋白中のIgGとトランスフェリンのクリアランス比を検査する選択性検査があります。 選択性検査は、原疾患の鑑別や、副腎皮質ステロイド薬による治療への反応性の予測に用いられます。
一次性ネフローゼ症候群の原疾患の確定診断には、組織の一部を採取して調べる腎生検が必要になります。 二次性ネフローゼ症候群でも、確定診断や治療法を決定するために、腎生検を行うことがあります。
入院安静が原則です。 食事療法では、浮腫に対しては水分と塩分の制限を行います。蛋白摂取量の制限が推奨されています。
一次性ネフローゼ症候群では、薬物療法としてステロイド薬を用いることが多いです。治療効果は病型や重症度によって異なります。 効果があっても、また再発してしまうこともあります。 ステロイド薬の投与は長期間になることが多いため、耐糖能障害、感染症、骨粗鬆症、消化性潰瘍、高血圧、精神症状などの副作用に注意します。
難治性のネフローゼ症候群に対しては、免疫抑制薬を併用することがあります。骨髄抑制、性腺障害、催腫瘍性(さいしゅようせい)などの副作用があるので、注意が必要になります。 抗血小板薬、蛋白尿減少作用が認められるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンU受容体拮抗薬などの降圧薬を投与します。
二次性ネフローゼ症候群に対しては、基礎疾患に対する治療が優先されます。
続発性ネフローゼ症候群に対しては、高脂血症に対して抗高脂血症薬を投与します。 浮腫に対しては、利尿薬が使用されます。 高度な浮腫、胸水、腹水、末梢循環不全状態に対してアルブミン製剤をしようすることがありますが、効果は一時的です。尿蛋白量の増加によって、腎障害を助長することがあるので、注意が必要です。 機械を使用した血液濾過法を行うこともあります。
小児の微小変化型ネフローゼ症候群は、ステロイド薬の使用が効果的で、90%以上の患者さんで尿蛋白が陰性化する完全寛解します。成人でも、約75%で完全寛解が得られます。7日〜10日で尿蛋白は改善します。 しかし、約60%の患者さんで再発が認められます。約30%の患者さんでは頻回に再発しますが、腎不全への進行は極めてまれで、予後は良好です。 副腎皮質ステロイド薬を大量に使うので、高血圧、消化管潰瘍、低カリウム血症、緑内障、白内障、骨粗鬆症などのさまざまな副作用に注意する必要があります。
他のネフローゼ症候群では、一般的にステロイド抵抗性があり、ステロイド薬の投与があまり効果がないことが多いです。効果が得られない場合は、慢性糸球体腎炎を疑い、組織を取って調べる腎生検を行います。 巣状分節状糸球体硬化症(そうじょうぶんせつじょうしきゅうたいこうかしょう)、膜性腎症などでは、約70%でステロイド抵抗性があります。10%〜20%では副腎皮質ステロイド薬が効かず、巣状糸球体硬化症が多く、予後は不良です。 ネフローゼ状態が続くと、徐々に腎機能障害が認められるようになります。
高度な蛋白尿や浮腫が認められた場合は、ネフローゼ症候群を疑います。 子供の場合は小児科、成人の場合は内科か腎臓内科を受診するようにしてください。